「なるちゃーん、今から買い物お願いしてもいい?」
「はーい、大丈夫です!」
ベテラン女中、山田さんから買い物を頼まれた私は、メモと財布を持って屯所を出た。
にしても眠い。
この間、嫌な夢を見てから、毎日のように悪夢というものを見る。同じ夢だったり、その夢の続きだったり...あぁ、思い出しただけで胸糞悪い。
私は、買い物を終え、自払でアイスを公園で休んでいた。
ああー、今日マヨネーズ無いしラッキーなんだけど、眠過ぎて全く重くない荷物を持つだけでフラフラする。そりゃ、2時間とかほぼ寝れてなかったりするのが一週間以上続いてんだもんな。よくハードな女中の仕事こなしてよね、私。隙を見て少しサボったりしてたけど...。
アイス美味いのに全くテンション上がらない。 このままここで少し寝てしまおうか...買い物の中身急ぎではないって山田さん言ってたし...。
うん、10分だけ...10分だけ寝る。
私はケータイのアラームをかけて重たい瞼を閉じた。
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ここどこ?あとうるさい。
私は、どこかの家で寝ていたらしい。誰が運んできた?でも誰の家なのここ...え?誘拐!?
「ええええええ!!?」
「なる起きたアル!!」
「はァ!?神楽!?ええ!万事屋がお金目的で誘拐!?」
バチン!!
「っんな事するかァァ!!」
「...ったい!」
誘拐だと思った私は知り合いの万事屋がそんなことはしないと思いながら大きな声で叫んでしまったらしい。銀ちゃんに力いっぱい叩かれたけど。
「なんで私、万事屋に?あと今何時?」
「なるさん、公園で寝ていたんですよ。あと、今は17時です」
「17時...、あ!」
「真選組には連絡しておきました」
新八くん、この中で1番の常識人だよ、眼鏡だけど。
「え?眼鏡関係なくね!?」
あ、シカトしよ...
「シカトしてんじゃねぇええ!!」
「なるちゃんよォ、なんであんなとこで寝ていたわけ?危ないよ?俺らが通ったからいいけどよォ...本当に危ないよ?なるちゃんみたいなちんちくりんにでも発情する物好きだっているんだから」
「銀ちゃん...死ね」
ムカつくわ...天パ...もっとクルクルになって髪の毛に巻き込まれて死ね!!
心の中で銀ちゃんに対して悪態を付いていると
「なる寝れてないアルか?」
「え...」
「クマできてるアル。寝不足は美容の大敵ネ!」
クマ出来てるんだ。眠過ぎて全く気づかなかった。
「ちょっと最近、怖い夢見てて...はは」
「ぷっぷー、なるちゃん怖い夢見て寝れないとかお子ちゃまですねー」
なんて銀ちゃんにバカにされたので、鳩尾に1発拳を入れた。あ、この前も鳩尾に拳いれたな。きっとブラックホールなんだ、銀ちゃんの鳩尾。
「そういう夢じゃない。オバケとかじゃないの。見たくない光景...現実身があって、全てが現実のような夢。血の海のなか、私が1人で立っている。まるで私が血の海を作った犯人のように」
「.....」
「この間、初めて人を斬った時からずっとそんな夢を見てる」
「それ誰か知ってんのか?」
「ずっと見てるいることは誰も。最初に夢を見た時こことを知っているのは沖田さんですね」
沖田さんの名前がでてきた途端、ニヤつく銀ちゃん。顔面に1発グーで拳をいれたら、「ありえねぇ!!」とか言っていたけど、ニヤつく銀ちゃんが悪いのでゴミ屑を見るような目で銀ちゃんを睨んだ。
「そんな怖い夢を見た時は誰かと一緒に寝るのがいいネ!」
「一緒に寝る?」
「うん!だからなる!私と一緒に寝るアル!」
「え...」
突然のことで驚いた。神楽とお泊まりしてみたいけど頼まれていたもの、屯所い持っていかないといけないし、なにより外泊許可がいる。
万事屋なんて絶対に許可がおりない。あの近藤さんだって許さないよ。
「一緒に寝たくないアルか?」
「...寝たいけど、色々と許可が...」
神楽見た目が可愛いから、今の頭を傾けるのは本当にズルい。
ピンポーン
そんな時、万事屋のインターホンが鳴り響く。心配くんが玄関に向かうり
「町人B、帰りやすぜ」
「お、沖田さん!?」
沖田さんが何故万事屋に!?
「え?迎えに来てくれたんですか?」
「巡回のついででィ。土方コノヤローに頼まれた」
なるほど...
「沖田くん、なるちゃん寝不足でうまく歩けないからおんぶしてやってよ」
「嫌でィ。腰が砕け散る」
「私は象かよ...」
「嫌ヨ!なるは私と寝るネ!」
「は?冗談はよしなせェ、帰るぞ」
「ごめんね、神楽。休みの日にくるね!」
「絶対だよ!?」
私は神楽の問いに精一杯の笑顔で応える。
神楽は一瞬大きい目を更に大きくて私を見ていたが、すぐに元に戻って、「約束アル!」って大きな声で言ってくれた。友達だし、妹みたいだな。
沖田さんとケンカになるかと思ったけど案外あっさり引いてくれて助かったな。私は神楽の頭を撫でて、ソファから立ち上がろうとした時、足元がよろける。え、マジでか。
「ったく。ほらよ、俺の気が変わらねぇうちに乗れ。10秒で乗りな」
沖田さんが私に背を向けてしゃがむ。
ん?マジで?
おんぶを提案した銀ちゃんも口を開けて驚いている。
「早くしろ町人B」
「あ、はい。失礼しまーす」
ま、ま、マジでいいの?
え?沖田さん、案外背中広くない?ひょろいとか思っててごめんなさい。ちゃんと男の人なん...で...男の人.....
「.....はァ!?」
「っせい!なんでィ!」
「あ、ごめんなさい」
突然大声を出した私に驚いたものの、沖田さんは私をすんなりおんぶして荷物を持ってくれた。
「お、お世話になりました」
私はなるべく沖田さんの背中に体重をかけないようにおぶられたのであった。
寝不足とおんぶ
(ありゃ、沖田くんを異性として改めて実感した顔だな)