暗闇の中何をしたいんだ、と白澤の方を眺めていると、白澤が口を開いた。

「後ろを見ろ」

鬼灯が後ろを振り向くと、Xという文字が光を放っていた。

「前はなかったはずです」
「夜光塗料なんじゃないの?」
「...なるほど」

鬼灯は再び電気を点け、先程投げ捨てたノコギリを拾って持ち手で壁を殴って壊し始めた。
何度か殴打して壁を壊し、中に手を入れると、南京錠のついた小箱が出てきた。

「鍵がついていますね。...封筒に入っていた鍵は?」

白澤は辺りを見回し、先程自分が諦めて放った小さな鍵を見つけると、鬼灯に向かって投げた。
鬼灯が鍵を受け取り、箱を開けると色々なものが入っていた。
まずは一番使えそうな携帯電話を取り出して白澤に見せた。

「おお...!」

そして次に2本のタバコ。

「くれよ」
「この地下にあったものを口にするんですか?」

白澤は一瞬考えた後「確かに...」と思って諦めた。
白澤には見せていないが、箱の中には毒も入っていた。
静かに読めと書かれた手紙を、白澤に見えないようにそっと開いた。

“タバコは無害だ。毒を浸らせなければな。白澤を殺すのに銃はいらない”

「.........」
「何してんの?早く電話かけろよ」
「......。警察に電話をしましょう」

今時珍しい折り畳み式の携帯を開き、110と押して耳に押し当てた。
だがコールすら鳴らず、プーップーッと鳴るだけだった。
何度かかけ直すが同じようにしかならず、鬼灯は諦めて携帯を箱に置いた。

「...これ、知ってます。着信専用の携帯ですよ。......いや、待て...昨夜同じような事が...」
「はぁ...?」
「病院で仕事をした帰りの事です」

車に向かって歩いていたら、誰かがいる気配がして...疲れてるのか、と思い目元を押さえると、フラッシュを焚かれたような感覚がしました。
早く帰ろうと思い車に乗って、名前に連絡をしようとしましたが今と同じように電話が繋がらず...。
仕方なく駐車場にあった公衆電話を使おうとしたら、後ろから襲われたんです。

「奴は私を待っていた...わざわざ電話に工作までして。私が名前に電話をすると知っていて」

白澤は黙って鬼灯を見つめていた。

「...そういえば、なぜ明かりを消せと?」
「...別に」
「何故分かったんです?」
「...直感」
「直感...?」
「うん」
「...とぼけないで下さい。貴方は信用なりません」
「偉そうに何なの?」
「何を隠しているんです?」
「まぁ、色々と?」
「.........」
「ヤクザの女に手を出して半殺しにされた事、僕が女にだらしなすぎてめちゃくちゃ可愛かった元カノに振られた事、それから...」
「うるさい。もういい」
「.........」
「消すことを知っていた」
「どうとでも」
「ヒョロガリが」
「うるせぇデブ」
「デブじゃありません。腹筋割れてます」

白澤はハァと溜息をつき、半笑いしながら言った。

「そんなに知りたい?」
「教えなさい」

白澤は再度溜息をついてから、バスタブの中から写真を取り出した。

「よく見ろよ」

そして鬼灯に向かって思い切り投げた。
ひらひらと舞うそれを鬼灯はなんとか掴み取り、その写真を目にすると動揺した。

「...どこでこれを?」
「お前の手帳だよ」
「どうして早く見せなかったんですか...!」
「...言えないだろ」

鬼灯はしばらく動揺していたが、深く深呼吸をして気が高ぶっている自身を落ち着かせた。

「......考えないと」

“白澤を殺すのに銃はいらない”

鬼灯は白澤がこっちを見ていない隙にタバコに毒を染み込ませ、そして立ち上がってスイッチを切ろうとした。

「何してんだよ」

ちら、と白澤を見た後、何も言わずにスイッチを切った。
犯人の見ているモニターは途端に真っ暗になった。

「何考えてんだよ。お前ほんと意味わかんない奴だな」
「白澤さん、私の言う通りにして下さい」

鬼灯は相手に聞こえるか聞こえないか程度の小さな声でそう言った。

「はぁ?何?」

犯人は何か話し声が聞こえるが小さくて聞き取れず、焦り始めた。

「...わかりましたね?」

そして鬼灯は電気をつけた。

「...なあ、やっぱタバコ吸わせてくれ」
「...正気ですか?」
「うん。どうせ死ぬんだろうし最後にいい思いしたいじゃん」

鬼灯は2本あるタバコのうち、毒のついてない方を取って投げた。
その後一緒に入っていたライターも投げた。
白澤は嬉しそうな顔をしながらタバコに火をつけ、美味しそうに笑ってタバコを吸った。

「っ、あ、ぐっ...!?」

すると突然、白澤は苦しそうにもがき始めた。
鬼灯はそれを黙って見つめている。

「っ......、っ!あ、がはっ...!〜〜っ...、............」

やがて白澤は倒れ込んで目を閉じた。
それを確認すると鬼灯はカメラに向かって言った。

「どうですか。お望み通り毒殺しましたよ。名前はどこですか!」

しーん...と室内が静かになると、倒れたはずの白澤が突然声を上げた。

「〜〜っぅあ”っ!!?がぁっ...!!〜〜っ!!」
「...は?何事ですか?」
「っ鎖から電気が流れた...!」
「はぁ...。作戦が台無しじゃないですか」
「感電した!これをいますぐ外せよ!」
「もう芝居はいいです」

鬼灯は呆れたようにそう言った。

「わざとやってると思ってんの!?」
「もういいですよ...」

はぁーと深い溜息をつき、鬼灯は諦めて腰を落とした。



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