待ち合わせ(はたけカカシ)
いつもの時間にいつもの場所で。
恋人同士のそんな普通の待ち合わせが私たちには出来なかった。
『次はいつ会える?』
『…任務が終わり次第だね』
ひとりで歩きなれた道を進む。
彼が帰ってくるあの場所まで。
「……」
生い茂る木々を抜けると、里を他国から守る分厚い門が見えた。
この門の向こうで彼が里の為に命を懸けている。
なのに、何も力の無い私はここで待っている事しか出来なかった。
少しでも近づきたくて門に触れようと手を伸ばした時だった、
「…雨」
突然、大粒の雨粒が落ちてきた。
壁に背を預けながら空を見上げる。
(さっきまで晴れていたのに…)
私は全身で雨を受けた。
今の私にはこの雨がとても気持ちが良かった。
「早く帰って来なさいよ…カカシ」
家族も居れば、友達も居る。
だけど、彼無しではどうしても駄目だった。
会いたい話したい触れたい…彼が恋しくて仕方なかった。
「…カカシなんか、大嫌い」
「それは寂しいなぁ…」
地面に向かって吐き捨てた言葉に、頭の上から返事が返ってきた。
「カ、カカシ!?」
急いで顔を上げれば、そこにはずっと見たかった彼の姿。
忍服は所々破けて、泥や返り血で汚れていた。
「あーあ、可愛い顔がぐちゃぐちゃだよ?」
スッと彼の大きくて優しい手が私の顔に触れた。
涙と雨を軽く拭うと、そのまま胸に引き寄せられる。
「家で待ってなさいって言ったでしょーに」
「だって…だって…」
「はいはい。…華子はオレに会いたかったんだよね?ありがとう」
カカシはそう言って、ポンポンと優しく頭を撫でると、
その手をそっと私の顎に添えた。
「…嬉しいよ。正直、華子の事ほっときすぎて、オレ捨てられちゃうんじゃないかって不安だったから」
初めて聞く彼の心の声。
「でも、華子はちゃんと待っててくれた。」
彼の親指が私の唇をなぞる。
「これから先も沢山待たせる事になると思う…それでも、それでも華子はオレを好き?」
彼の真剣な目がじっと私を見つめている。
私の震える吐息が彼の指に当った。
「カカシなんか…だい…」
「…だい?」
「…だいすきなんだから…」
「よくできました」
彼はにっこりと微笑んで私の顎を引き寄せた。
*END*
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