ペン回し(丸井ブン太)



何十回目の“カタン”だろうか、

「あ〜っうるせー!!」

「うるせーぞ。丸井」

ついにブン太はイライラした声で叫んだが、
授業中なので当然先生に怒られた。

「だってよ!コイツが!!」

「何よー!私のせいにするつもり!?」

「そーだろぃ?さっきからペンをカタカタ落としてうるせーんだよ!!」

「だって!」

「はい。丸井と夕月は後で職員室に来るように」

先生はにっこりと笑って言った。

「「え゛…」」

ブン太と私は仕方なく静かに席に座るが、
今の言い合いで収まる訳もなく、小声での第2ラウンドが始まった。

「お前のせいで職員室行きだどーしてくれんだよ?」

「酷い!ブン太から騒ぎ出したんでしょ!!私は可哀想な被害者よ!!」

そう言って、私は両手を顔に当てて悲しんだ。

「泣き真似なんて通じねぇからな!」

「…ちぇっ」

「ちぇっじゃねーよ!んで、空はさっきから何やってたんだ?」

「えっ…そ、それは」

恥ずかしくて口籠る私に、ブン太は首を傾げた。

「何だよ、言えない事なのか?」

「…それ」

仕方なく、おずおずとブン太の指の上で綺麗に回転しているペンを指差した。

「は?」

「だから!…ペン回し!」

「…ブッ…アハハハハハハ!!なんだ、これがやりたかったのかよ?」

「ひどい!そんなに笑うなんて!」

「だってよ!お前の明らか回ってなかっただろぃ!!」

ペンを机に叩きつけてただけじゃん、
とブン太は馬鹿にしながらお腹を抱えて笑っている。

「もういいよ!意地悪ブン太に今後一切お菓子あげないから!!」

ベーッと舌を出してそっぽを向いた。
スネた私の姿を見たブン太は溜め息をつくと、私の耳元にそっと顔を近づけて、

「じゃあ後で手取り足取り教えてやるよ♪」

「っ!?」

彼はニヤリと不敵な笑みを浮かべると、見もしないノートに板書をし始めた。



*END*

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