漣ちゃんへ/Are you gentleman?(柳生比呂士)


外の景色が一望出来る窓際の席が私の特等席だった



今日も読みたい本を数冊手にとってその特等席に座ろうとした時だ





「もしもしお嬢さん?」





…お嬢さん?今時珍しい呼び方をする人がいるのね





「…私ですか?」






誰だろうと思いながら振り向くと





「はい。そうです」





そこには、優しく微笑んだ柳生君がいた


彼もよく図書室を利用しているから
図書カードを見た時に名前を知っただけなんだけど…




「な…何か?」


「えぇ、これを…」




彼はそう言うと、綺麗に折り畳まれたハンカチを差し出した




「あ…それは…」


「先程落としていましたよ」




眼鏡をクイッと上げて説明をしてくれた




「ありがとう!」


「お礼には及びませよ」




大人びた謙遜をする彼はとても中学生とは思えない




「柳生君はずいぶん紳士的だね」


「…そうですか?」


「うん。言葉使いとか」


「最近の男性は少々お口が下品ですからね」




丸井君とか切原君とか、仁王君……彼は例外ですが…などと呟くと
彼は、はたと何かに気づいて椅子を引いた




「どうぞお座りになってください」


「ほら、こういうとこも!柳生君は行動全部が紳士的だよ!」


「そうですか…」





柳生君は少し考え込むような素振りをすると
私の肩に両手を置いて、真剣な表情で私を見つめた




「…えっ?」


「では…」




途端に、肩を引き寄せられて
私は柳生君に強く抱き締められた




「あなたの気持ちも考えずにこのようなことをしても私は紳士でしょうか?」


「や…柳生君!?///」




紳士的な彼からは想像も出来ない程の切ない声で、私の心臓は今にも飛び出しそうだった




「私の気持ち分かっていただけますよね?華子さん」


「…はい///」




私の返事を聞くと、柳生君はゆっくりと私から離れた




「お返事は今すぐでなくても結構です」




それでは…と一礼をすると、柳生君は図書室を後にした




「似非紳士さん…か///」




まだ残っている抱き締められた感覚は、私の心臓の鼓動を早くさせるのには十分だった



ふと、窓を見ると綺麗な青空が広がっている




「…帰りにテニス部でも覗きに行こうかな」




手渡されたハンカチを軽く握り締めて
私は図書室を後にした





*END*

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