謝罪(丸井ブン太)
今日という今日は許さないんだから!
「もう!また私のお弁当食べたな!!」
そう言って、飄々と歩いている容疑者の前に
証拠のお弁当箱を突き出してやった。
「なんだよ、うるせーな。別にいーだろぃ」
「よくない!!」
堂々と言い放つ彼に、怒りを通り越して尊敬する…
「謝ってよ!」
「はぁ!?」
「楽しみにしてたんだからね!この唐揚げ!」
ブン太は大きな溜め息をつくと
少し屈んで私の身長に視線を合わせた。
「な、何よ!」
無言のままブン太はどんどん顔を近づけてくる。
「えっ?えっ!?」
情けないけど、目の前に見える綺麗な顔立ちに緊張してしまう。
ま、まさかこのまま…
「あ、あの…」
緊張のあまりぎゅっと目をつぶると、こつんと何かがぶつかった。
「…へ?」
ブン太は額を私の額にくっつけていた。
「…悪いな、空の弁当美味かったから食っちまった」
そう言ってスッと私から離れると、
何もなかったかのように再び歩き始めた。
「そ、そう…」
「これでいいだろぃ?」
じゃあな、と片手をブラブラ上げている後ろ姿をぼーっと見つめながら
明日のおかずは何にしようと考えている自分が
なんだかすっごく悔しかった。
*END*
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