姫蝶ちゃんへ/気持ち(仁王雅治)



黒板に真剣な目を向けているお前さんの横顔が好きじゃから








今日も授業中はずっとお前さんのことだけを見ることにした








お前さんはいつも俺が見ていることに気づいているんかの?








俺の視線に気づかないお前さんがなんだかもどかしくて









気を引こうと音をたてて貧乏揺すりをした









ほら…お前さんは迷惑そうな目をして俺を見ちょる









俺はその目をしっかりと見つめた









なのにお前さんは顔を真っ赤にしてうつむいてしまった











…もっとその顔を見せんしゃい










そして、次の休み時間にお前さんは俺のところにやってきた










「ねぇ…どうして仁王君は授業中にずっと私のことを見てるの?」









身長が俺より低いのもあるが…その上目遣い反則じゃき///









「別にお前さんのことなんか見ちょらん。勘違いじゃなかと」








お前さんの顔はみるみると真っ赤になった





林檎みたいじゃ…






「そ、そうだよね…私の勘違いだよね。やだ…恥ずかしいなぁ…」






お前さんはハハハっと笑っていたが








涙声だった










ちょっといじめ過ぎたかの…






「ごめんね…」






そう言って走り去ろうとするお前さんの腕を俺は掴んだ










「華子!」



「!?」








お前さんはとても驚いとった







当たり前か…
初めて名前を呼んだからのう






「……どうして…」


「…?」


「どうして私に構うの?話したこともないのに…」


「……」


「授業中いっつも目が合うから意識してたのに勘違いだって言われるし…」









お前さんの目は涙でいっぱいだった








「だからもう諦めようって思ったのに
今、苗字さえ呼んだこともない私の名前を呼んだよね?」









溜まった涙は次々とお前さんの頬を伝ってく








「もうわけわからないよ…
ねぇ仁王君。この気持ちどうしたらいいの?」












掛かったぜよ










俺は掴んでいたお前さんの腕を引き寄せて顔を近づけた






「…!?に…仁王君?///」


「雅治でいい…」


「へっ?」


「呼びんしゃい」


「…ま…雅治…君///」


「よくできました」








俺はそう言ってお前さんを抱き締めた






「えっ!///」







想像してたよりもふかふかと柔らかくて抱きごこちが良かった






「ちょっ!に…じゃなくて雅治君!!」


「なんぜよ?」


「いや…訳わからないんですけど…」


「なんじゃ…言わんとわからんのか?」


「…うん」







俺は姫蝶の耳元にそっと顔を寄せた






「好いとーよ」















気持ち


(に…じゃなくて雅治くん)(ん?)(恥ずかしいんだけど…この体勢?)(…いやじゃ離さん)



*END*

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