Emperor Wedding



「弦一郎。とうとう明日ね」

「ああ」

「ふふ…私は幸せ者だわ」

「…今日はもう遅い。早く寝ろ」

「えぇ」






太陽がジリジリと照りつける真夏。
私は素晴らしい日を迎えました。

「わぁ…素敵」

小さい頃から憧れていたから、
綺麗なウエディングドレスを着ている自分の姿を見た時の感動は、
とても言葉に出来ないものだった。

「弦一郎、本当にありがとう。
本当は神前式だったのに、ドレスが着たいって無理なお願いを聞いてくれて…」

「フン…なんせお前からの2度目の“一生で1度のお願い”だったからな」

隣に居た弦一郎は少々満足げな口調で言った。

「あら?前にも“一生で1度のお願い”を使った?」

「…忘れたのか?」

「えぇ」

「む…。付き合って欲しいとお願いしてきたのはお前だったろう」

「ふふ…そう言えば」

申し遅れました。
本日、私は隣に居る彼、真田弦一郎と結婚致します。

彼の白いタキシード姿はとっても新鮮で、
正直凄くかっこいいけれど、彼には秘密。

逆に、彼は私のこの姿をどう思っているのかしら?
って思ったら自然と口が動いてしまった。

「ねぇ弦一郎…ウェディングドレスどう?」

「ああ…」

「もう!ああ…じゃなくて感想よ!」

「む…」



口を一文字にして腕を組みひとしきり考えると、
やっと褒め言葉が見つかったようで、どこか堂々とした口調で言った。

「綺麗になったな、さくら」

「…ぷっ」

「わ、笑うとは失敬な!」

「だって、弦一郎ったらお父さんみたいな事言うんだもの」

「なっ…!!」

弦一郎は顔を真っ赤にすると、私に背を向けて俯いた。

(ふふ…可愛い人)

ふと窓を見ると真っ青な空に、綿飴のような入道雲がもくもくと膨らんでいる。
外で鳴いている蝉の声もだんだんと騒がしくなっていた。

「…あの夏を思い出すな」

弦一郎は窓の景色を見ながらポツリと呟いた。

「中学最後の夏…でしょう?」

「ああ…」

ジリジリと鳴くセミの声を聞きながら、私達はあの夏へ思いを馳せた。
そこへコンコン、と控えめなノックが響く。

「失礼します。そろそろお時間です」






式は和やかに行われた。
真っ赤な絨毯の上をお父さんと手を組んで歩く。
左右には今までお世話になったたくさんの人達。
その先に見えるのは神父さんと真っ白なタキシードを着た弦一郎。
私の手がお父さんから弦一郎に渡された。

(とうとう結婚するのね私…)

式は順調に進み、誓いの言葉を交わし合い、
最後に誓いのキスをした。

その時に言われた言葉を私は一生忘れないと思います。

「生涯お前を守り続けるぞ、さくら」






私達は手を組んだまま教会の外に出た。
外には沢山の人達が花道を作って待ってくれていた。
沢山の拍手と祝福の言葉の中私達は歩く。

「さくらおめでとー!」

「よっ!色男っ!」

「ブン太…そのかけ声恥ずかしいから止めろ」

「それにしても、真田君が教会で式を挙げるとは…」

「確かに。俺のデータもまだまだだったな…」

「真田副部長のチューが拝めたんだからいいじゃないッスか!…クックックッ」

「言うのう、赤也…」

「ヤンス〜」

「フフッ…赤也、周りの様子をよく見てごらん」

「…へっ?」

「赤也あああっ!!!」

この後、式が一時中断したのも、
今となっては良い思い出です。






暫くすると会場が少し騒がしくなってきた。
きっと次はみなさんお待ちかねのブーケトスだから。

(実は渡したい人がいるんだけど…)

「せーのっ」

綺麗なブーケは青空を鮮やかに飛んだ。
みんなブーケめがけてジャンプしていたけれど、
ブーケは自らが人を選んだかの様に一人の女性に向かって落ちようとしていた。
彼女もそのブーケを取ろうと嬉しそうに両手を広げて…

「ブフッ」

…取り損ねていました。

思いっきり顔面に当たったようで、彼女の目は涙目になっていた。

「いたたたぁー」

「おっ、おい!大丈夫か!?」

「あ、はい…。ありがとうございます」

「いや、大丈夫ならいいんだ。じゃあな…」

「…あ、あの!…あなたのお名前を聞いてもいいですか?」

「ジャッカル桑原だ。お前の名前は?」

「私は…」






これをきっかけに2人は付き合いだし、そして結婚した。
弦一郎にその事を話したら、眉をぴくりと動かして、ほう…の一言だったけれど、どこか嬉しそう。

弦一郎はなんだかんだ優しいんだから!
普段から素直に笑っていればもっと可愛いのに…

でも、私はそんなぶっきらぼうな彼に惚れたんです。



*END*


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