Red Wedding


空は一面の青空。
春風によって木の葉がサワサワと揺れ、子鳥がチュンチュンとさえずっている。
平和だ。

私は…

「幸せだぁ〜」

感情を抑えきれず、声に出してしまう。
椅子に座っているのもなんだかもったいない気がして、ウロウロ歩いてみたり、
鏡の前で決めポーズをとってみたりする。
鏡には真っ白なウエディングドレスを着て幸せ全開の笑顔を向けた私が映っていた。

今日、私は大好きな人と結婚するのだ。
小さい頃からの夢がとうとう叶うと思うと、居ても立ってもいられない。

早く彼にもこの姿を見せたかった。
なかなか似合ってるでしょって自慢してやるんだから!と気合いを入れていたら、
ゴンゴンと強くドアをノックする音が聞こえた。

「はーい」

「入るぜー」

「ブン太ぁ!!」

私の大好きな赤い髪の彼だった。
白いタキシードをきちんと着ている彼はいつも以上にかっこいい。
嬉しくて嬉しくて、つい駆け寄った。

「おいおい走ったら危な…」

「ん?どうしたのブン…太」

なかなか似合ってるでしょって自慢してやるんだから!なんて思ってたけど、
右手で髪の色と同じくらい真っ赤になった顔をおさえて俯いてるブン太を見たら、そんな気持ちも無くなった。

(もう…私まで照れちゃうじゃん)

恥ずかしくなって私も俯いたら、突然目の前が真っ白になった。

「きゃっ」

ふわりと甘い匂いがした。
驚いて閉じた目を開くと、毛先がぴょんと跳ねた赤い髪が間近に見えた。

「ちょっ…急になにす」

「すげー綺麗だ…空」

「…でしょ?」

「…プッ…おいおい!
普通そういう時は黙って恥ずかしがってるもんだろぃ?」

「なっ、なによー」

そう言ってブン太を睨みつけてやろうとしたけど、
ポンポンと私の頭を笑いながらたたいてるブン太を見たら、そんな気持ちも無くなった。
彼の笑顔を見るだけで私も幸せになれるんだ。

「ん?」

笑っていたブン太が急に何かを見つけて小走りでテーブルに向かった。

「これ食ってもえぇ?」

そう言って差し入れにもらったサンドイッチを指差した。

「…デブン太」

「なんか言ったか?」

「ううん何でもなーい!いいよ食べて」

「やったぜぃ!」

そう言っておいしそうにサンドイッチを食べ始めた。
真っ赤な髪に真っ白なタキシードを着ているブン太はなんだかショートケーキみたいだなって心の中で笑った。

「そーいや、今日デカいケーキが出んだろぃ?楽しみだよな☆」

「…ブン太あれ全部食べれないよ」

「えっ?」

「まさか全部食べれると思ってた?」

「ちっ…ちげーよ!!」

「あっ、その反応!食べようと思ってたんでしょ!」

「だからちげーって!俺はただ…」

コンコン、と、
更に言い訳を続けようとしたブン太の言葉を遮る様に、
今度は静かに扉がノックされた音が部屋に響いた。

「失礼します。そろそろお時間です」






式は和やかに行われた。
真っ赤な絨毯の上をお父さんと手を組んで歩く。
左右には今までお世話になったたくさんの人達。
その先に見えるのは神父さんと真っ白なタキシードを着たブン太。
私の手がお父さんからブン太に渡された。

(とうとう結婚するんだ私…)

その後も順調に式は進んだ

誓いの言葉を交わし合い、
最後に誓いのキスをした。

その時に言われた言葉を私は一生忘れないからね。

「もう離さないぜ、空」






式が終わると、私達は手を組んだまま教会の外に出た。
外には沢山の人達が花道を作って待っていてくれた。
沢山の拍手と祝福の言葉の中私達は歩く。

「海おめでとー!」

「丸井先輩かっこ良かったッスよ!」

「うらやましいでヤンス〜」

「あのブン太がこんな立派になるなんてな」

「お前たちが離婚する確率は…」

「フフッ…柳いい加減にしないと…」

「仁王君!勝手な行動はよしたまえ。まだ式の途中です」

「プリッ」

「たるんどる!!!」

最後の方全く祝福の言葉じゃなかったけど、みんならしいな。
本当にありがとう。






暫くすると会場が少し騒がしくなってきた。
次はみんながお待ちかねのブーケトスだからだろう。

(受け取って欲しい人居るんだよね、届くといいな)

「せーのっ」

ポーンと、ブーケは綺麗に青空を飛んでいった。

みんな、ブーケめがけてジャンプした。
が、1人の男が軽やかにジャンプして軽々とブーケを取ってしまった。

「ヘヘッ♪取ったッスよ海先ぱ…うわぁ!!」

綺麗にブーケを取ったものの、男は着地を失敗して人ごみに崩れた。

「きゃあ」

「うわぁっ!わっ、わりぃ…大丈夫か?」

「えぇ…」

「そうか…なら良かった。じゃあ俺はこれで…」

「待ちなさいよ!あなた名前は?」

「へっ?俺は切原赤也。そーいうあんたは?」

「私は…」






これをきっかけに2人は付き合いだし、そして結婚した。
ブン太にその事を伝えたら、あの時のウエディングケーキは全部本物が良かった…
なんてブツブツ文句を言いながらケーキを食べていた。

もう!今食べてるのに!
でもね…私はそんなブン太が大好きだよ。



*END*


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