Silver Wedding



「はい、出来ましたよ!」

そう言われて目を開くと、鏡に映る自分の姿に驚く。

「これが…私?」

目の前には真っ白なウエディングドレスに身を包んだ私が居た。

「とてもお似合いですよ」

「ありがとうございます!でも…信じられない…」

「ふふっ。では私達はこれで失礼します。
お時間になりましたらお呼びするのでしばらくこちらにいらして下さい」

とお辞儀をしてメイクさんは出て行った。
部屋が自分ひとりになった事を確かめてから、改めて鏡で自分を見てみる。
本当に信じられない。夢みたいだ。

ウエディングドレスを着て大好きな人と結婚式を挙げることが小さな頃からの夢だった。
今その夢が叶うと思うと頬の緩みが抑えられない。

あの人も今頃着替えてるんだろうな。
きっとかっこいいんだろうな。
そんなことを考えていたら、コンコンとドアをノックする音が聞こえた。

「はーい」

ガチャっと静かに開いたドアから出てきたのは、
真っ白なタキシードに身を包んだ彼だった。

「仁王!」

嬉しくて駆け寄った。

「…転けて怪我したら話にならん。走るんじゃなかと」

「はーい気をつけます」

ずっと一緒に居たから分かる。
今、ほんの一瞬だけ仁王が私のこの姿に驚いてた事。
上手く顔を見せない様にしてる時は、決まって照れてるんだって事も知ってるんだから。


(…どうしよう、凄く嬉しい)


やった!と心の中でガッツポーズをしていたら、突然体が揺れた。

「え!?」

「綺麗じゃ…海」

「っ!?」

耳元から聞こえる大好きな人の声。
白いドレスから伝わる温もり。
銀色の髪が頬に当たってくすぐったかった。

「にお…」

「お前さんも今日から仁王じゃ…ややこしいから名前で呼びんしゃい」

「ま…雅治…」

「よくできました」

ニッと少年の様な笑顔をして、ポンポンと私の頭をたたいた。
たったこれだけで私の頭の中はあなたでいっぱいになる。

白いタキシードを着ている仁王は、ふらりと窓に近づいて大きな窓を開けると、
「今日も良い天気じゃのー」と外を眩しそうに眺めた。
彼を見てるだけで、お腹の底からあったかい気持ちが溢れてくる。

「…ねぇ雅治」

「ん?」

「今日は最高の日にしようね!」

「当たり前じゃ」

そう言って2人で自然と抱き合った。
これから先の未来を思い描きながら。

ゆっくりと顔を寄せ合った時、コンコンとノックと共に声が聞こえた。

「失礼します。そろそろお時間です」






式は和やかに行われた。
真っ赤な絨毯の上をお父さんと手を組んで歩く。
左右には今までお世話になったたくさんの人達。
その先に見えるのは神父さんと真っ白なタキシードを着た雅治。
私の手がお父さんから雅治に渡された。

(とうとう結婚するんだ私…)

式は順調に進んだ。

誓いの言葉を交わし合い、
最後に誓いのキスをした。

その時に言われた言葉を私は一生忘れないよ。

「もう離さんぜよ、海」






式が終わると、私達は手を組んだまま教会の外に出た。
外には沢山の人達が花道を作って待っていてくれた。
沢山の拍手と祝福の言葉の中私達は歩く。

「海おめでとー!」

「仁王先輩かっこ良かったッスよ!」

「うらやましいでヤンス〜」

「仁王君。君も立派になりましたね」

「お前たちが離婚する確率は…」

「柳、うるさいよ」

「うおっ!コレうめー!!」

「おいブン太!まだ食うな!」

「たるんどる!!!」

最後の方全く祝福の言葉じゃなかったけど、みんならしいな。
本当にありがとう。






暫くすると会場が少し騒がしくなってきた。
次はみんなお待ちかねのブーケトスだからだろう。

(実は1人受け取って欲しい人いるんだよね…)

「せーのっ」

ブーケは弧を描いて綺麗に青空を飛んだ。

みんながブーケめがけてジャンプしたが、
花は自らが人を選んだかのように、ひとりの女性の腕の中にスポッと入った。

心の中で願った人とは違ったけど、あの女の人とても嬉しそうだからいっか
なんて心の中で呟いていたら、

「きゃあ」

とブーケを持った女の人が小さな悲鳴を上げた。
ブーケを持っているから、沢山の人に押されてしまったのだ。

危ない!と思って駆け出したけど間に合いそうになかった。
誰か!!と叫んだ時、

「君、大丈夫?」

その人はポスッと、まるでブーケの様に一人の男の人の腕の中に納まった。

「あっ…ありがとうございます」

「フフッ…気にしないで。
大丈夫そうでよかった。じゃあ俺はこれで…」

「あっ、あの…あなたのお名前は?」

「俺かい?俺は幸村精市。君は?」

「あっ、わっ私は…」






これをきっかけに2人は付き合いだし、そして結婚した。
雅治にその事を伝えると、全部計算通りナリなんて言い出した。

なーんだ、流石雅治…
やっぱりペテン師には適わないや。



*END*


Back Top








人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -