04


 白いカーテンの向こうでナポリ湾の青い海と空が輝くお昼時。テラスから流れてくる爽やかな海風を受けながら、ソファーに深く腰掛けた夢主は笑みを浮かべた。
「懐かしい」
 膝上に置いた分厚いアルバムを眺めてぽつりと呟く。彼女の目に飛び込んでくるのは幼い我が子の成長写真だ。出産直後の元気に泣き叫ぶ姿、ベッドの上で見せる愛くるしい寝顔、ハイハイからつかまり立ちをした瞬間、一歳の誕生日に懇願してDIOと一緒に撮った親子の記念写真……時系列に並べられたそれらは、一枚一枚が大切な思い出として飾られてある。
「これは初めて歯が抜けた時ね」
 ジョルノが誇らしげに見せてきた時を写し取ったものだろう。他にもヴァニラに肩車をしてもらい、ペットショップの世話をして、エンヤ婆とお絵かきをして遊ぶ小さな息子の姿に頬は自然と緩んでしまう。暗闇の多い屋敷の中で、ジョルノはその名の通り太陽だった。
「色々あったけれど、毎日楽しかったわ」
 ジョルノが元気に育っていく写真をめくりながら、初めての子育てにそんな感想を残す。
 しかし、ページが進むにつれていつしかエンヤ婆は居らず、話し相手だったマライアの姿も見えなくなった。年を跨いだところで写真はふつりと途切れている。夢主はもう一冊のアルバムに手を伸ばして、最初のページをめくった。
「何度見ても不思議……」
 両手を胸に置き、大きなベッドで横たわる夢主の姿だ。それまでの笑顔あふれる写真とは一転して硬い表情のジョルノが写り込んでいる。
 変化のない自身とは逆に、学校へ通い始めたジョルノの成長は目まぐるしいものがあった。あっという間に背丈が伸び、黒かった髪はいつしか金色へ、どこか愁いを帯びていた眼差しは強くまっすぐなものになった。
「……」
 その変化をやはりディオの子だと頼もしく思う一方で、見届けられなかった寂しさが胸を締め付ける。幼児から青年へ成長した写真の中のジョルノを撫でていると、リビングの扉をノックする音がした。
「夢主様、またアルバムを見ておいででしたか」
 テレンスが紅茶のセット乗せたワゴンを押して入ってくる。夢主はそっと表紙を閉じた。
「素敵な写真をありがとう。あなたのおかげで何度見ても見飽きないわ」
「それは何よりです。たくさん撮って残した甲斐がありました」
 手際よく紅茶を注ぎながら、テレンスは嬉しそうに微笑んだ。
「さて、もうすぐそのご子息が到着する頃ですよ」
「もうそんな時間?」
 時計を見ればいつの間にか予定した時刻だ。時を忘れてアルバムに見入っていたらしい。
「あなたとのランチを毎週心待ちにする姿は、まるで昔に戻ったようで微笑ましい限りですね」
「そうね。ディオと一緒じゃないのが残念だけど……」
「仕方ありませんよ。今は昼ですから」
 子は母と、父は妻と、長年の空白を埋めるようにそれぞれが彼女しか見ていない。もう少し落ち着けば三人で家族らしい生活になるだろう。
「それでは、もうしばらくこちらでお待ち下さい」
 テレンスは静かに退出し、夢主は暗がりへ消える背中を見送った。彼が去った後、アルバムを抱えて大きな本棚に近づく。DIOが集めた多くの書物は難しい題名ばかりが並んでいる。少し読んだくらいでは理解できそうにないそれらを一瞥しつつ、二冊の厚いアルバムを元の場所へ戻した。
「ディオは相変わらずね」
 読書家な彼は昨夜も違う本を読んでいた。ワインを飲みつつ、時折、隣で眠る夢主の髪を撫でるのが彼の本の楽しみ方らしい。
「これ、もう全部読んだのかしら?」
 夢主が見上げる本棚の先に、ふと目に飛び込んできた物があった。先ほど手にしていた物に比べると厚みは半分以下だが、同じ装丁からそれもアルバムらしい。つま先立ちをし、指を伸ばしてみるが、夢主の背では触れることも叶わなかった。
「どうしてあんなところに?」
 不思議に思った彼女は部屋の端から椅子を運び、靴を脱いでその上に立つ。薄いアルバムは夢主の指によって引き出され、明るい光の下へ晒される事になった。
「これは……アメリカ? それに赤ちゃん?」
 最初のページに貼られていたのは風に揺れる星条旗と見知らぬ乳幼児の写真だ。しかもそれが三枚もある。右端に書かれた1988年と言えば、ディオと暮らしたエジプトの館で激しい戦いがあった年だった。
「誰かしら?」
 写真の下には「ドナテロ」「ウンガロ」「リキエル」と聞き覚えの無い名が記されてある。養護施設で暮らす彼らをしばらく眺めていたが、さらにページをめくったところで夢主の思考は停止した。
 DNA鑑定書の父親欄にはディオの名が記されており、青年になった彼らの顔にはどこか面影が残っている。言うまでもなく、これは彼の子供たちなのだろう。
 ジョルノとは別にディオには三人の子供がいる……その事を理解した夢主の手からアルバムが滑り落ち、床の上でバサリと音を立てた。


 ジョルノ提案のガーデンランチの準備を終えたテレンスは、何か不足している物は無いかと最終チェックに余念がなかった。白いテーブルクロスの端を整え直し、花瓶に生けた花の向きを変えていると、不意に玄関扉が開く音がするではないか。ジョルノたちが車で到着したにしてはあまりに静かすぎる。怪しんだテレンスが確認すると、リビングで待機しているはずの夢主が駆け出してきた。
「夢主様?」
 呼び止めても返事は無く、彼女は顔を覆ったまま門の向こうへ走り去っていく。
「えッ……?! ちょ……お、お待ち下さいッ!」
 追いかけようとするテレンスのつま先に運悪くテーブルの脚が引っ掛かる。傾く花瓶と皿を慌てて抱きかかえ、元の場所へ戻す頃には彼女の姿はどこにも無かった。


「話はそれで終わりですか?」
 優しい口調で問いかけられるほど恐ろしいものはない。テレンスは唾を飲み込みながらDIOを彷彿とさせる鋭い眼光に身を竦ませた。
「申し訳ありません! すぐに近くを探したのですが……」
 女の足で遠くへは行けない。そう思っていたが夢主を見つけ出す事は出来なかった。
「私一人では手が足りず、暗殺チームの面々に捜索を依頼しております」
「この事をパードレには?」
「……」
「……そうですか」
 今まで見た事が無いほど顔面蒼白になるテレンスから視線を外し、ジョルノは背後を振り返る。そこには突然の出来事に困惑するブチャラティの顔があった。
「取り込み中ならまた出直すが……そうもいかないらしいな」
 大量の冷や汗を流して震える執事に同情しつつ、ブチャラティは連れてきた仲間たちを見渡した。
「このおっさん大丈夫か? 白目剥いてねぇ?」
「なぁ、このジュース飲んでいい? 俺もう腹ぺこなんだよ。ランチまだぁ?」
「お前ら……少しは話を聞いてやれッ!」
 テレンスを茶化すミスタと早くもソファーで寛いでいるナランチャ、それを諫めているのはフーゴだ。
「何だもうお開きか? 俺は回りくどい挨拶なんて苦手だから、別に構いやしねぇがな」
 アバッキオに言われてブチャラティは苦笑する。ジョルノの母親に一度、顔を見せておきたいと申し出たのはブチャラティの配慮だ。聞けば何年も昏睡状態で、つい最近目覚めたばかりだという。その間に息子は成長し、子供から大人へと変化しているのだから不安と心配は人並み以上だろう。
 ジョルノ自身はどちらでも良かったが、ブチャラティの心遣いを知り、愛する母からぜひその友達を連れてきて欲しいと請われては断り切れなかった。
「僕がここに来ると知りながら、何も言わず外へ出るなんて余程の事です。一体、飛び出した理由は何ですか?」
「それが……私にも……。ほんの数分前まで楽しそうにしておられたので……」
 テレンスの説明にジョルノは眉を寄せる。
「とにかく、早く見つけ出さないと」
 イタリア語が話せず、土地に不慣れな母親は確実に迷子になっているだろう。妙な輩に絡まれ、不安で泣き出す前にこの手で保護しておきたい。心配のあまり胃痛を起こしそうな執事とジョルノの様子を見て、ブチャラティはそっとアバッキオの横腹を押した。
「……くだらねぇ理由でも知らねーぞ」
 仕方なくアバッキオは背後にムーディ・ブルースを発現させる。驚くテレンスの前で額のカウンターが動き、スタンドは夢主の姿へと移り変わった。
「ここでちょうど30分前だ」
 今まさに玄関から出て行こうとする瞬間だ。可憐な装いをした若い女性が髪を揺らして駆けている。アバッキオとブチャラティは何度か目を瞬かせてジョルノを振り返った。
 彼らの言いたい事をひとまず横に置いて、ジョルノは一時停止された母に近づいた。
「……泣いていますね」
 これまで見てきた笑顔は消え、苦悩に満ちた表情を浮かべている。手で顔を覆い隠そうとするその向こうで、いくつもの涙を流していた。
「マジで母親? 姉じゃなくて?」
「ええ、確かに僕の母です」
 ナランチャの驚きを含んだ質問にジョルノは平然と返す。誰が何と言おうとそれが事実だ。
「巻き戻してください」
 ムーディ・ブルースは逆再生の速度を速めた。玄関から廊下、廊下からリビングへ駆け戻る姿をその場の七人が追いかける。床に落ちたアルバムの前で夢主が動きを止めると、テレンスは喉に物が詰まった時のような声を出した。
「そ、それは……ッ!」
 夢主の手が届かない高い位置に置き、極力目立たなくしたにも関わらず、彼女は見つけ出してしまったようだ。目にした内容にどれほど驚き、ショックを受けた事だろう。
「何だ?」
 絶句する執事の顔色からブチャラティは不穏を感じ取る。拾い上げたジョルノの手元を覗こうとするナランチャを押さえて静かに尋ねた。
「……腹違いの弟たちの写真ですよ。母は父の浮気をこれまで知らなかったので、強い衝撃を受けたのでしょう」
 長いため息をこぼしながらジョルノはそう説明する。顔を見合わせる仲間たちの気配を背後に置いて、彼はテレンスに向き直った。
「この事をパードレに知らせてください。僕たちは母を探しに出かけます」
 冷えた怒りを宿しつつ、静かな口調で命令を下すジョルノにテレンスは頭を下げる。再生を開始するムーディ・ブルースを横目に、彼は痛む胃を抱えてDIOが眠る上階へと急いだ。


 屋敷を飛び出し、夢中で路地を駆け抜けた夢主の目に以前ジョルノと二人で乗ったケーブルカーが駅に止まっているのが見えた。迷うことなくそれに乗り込んで目立たない一番後ろの座席に座り込む。あふれてくる涙を袖口で拭いつつ、息を整えている間に車両は坂を下り始める。
(ジョルノ、怒ってるかしら)
 友人を紹介して欲しいと願ったのに自分はそこから逃げ出してしまった。色々と用意をしてくれた執事にも申し訳ない。
 しかし……今すぐ戻る気にはどうしてもなれなかった。この乱れきった気持ちを整理しないことには情けないがすぐにでも泣いてしまいそうだ。
(母親失格ね……)
 いくつかの駅を過ぎ、右に曲がるカーブで速度を落とす車両内から海沿いを眺めていると、不意に歩道からこちらを指差して叫ぶ男と目が合った。眼鏡をかけた目は鋭く、癖の強い髪をガシガシと掻いて携帯を耳に押し当てている。大声で怒鳴っているせいか周囲の人々は彼を遠巻きに避けていた。
「あれは……ギアッチョ?」
 彼の財布を偶然拾ったのが出会いのきっかけだ。夢主がジョルノの母親と知った時の表情は今思い出しても面白かった。
「この野郎ッ! やっと見つけたぜッ!」
 扉が開くと同時に勢いよく飛び込んできて、肩で息をしながら目の前に立ち塞がった。
「クソッ! のんきなツラしやがって! こっちがどれだけ心配したと思ってやがる!」
「えっ、心配してくれたの?」
 思いがけない言葉に驚く夢主にギアッチョはウッと呻いて口を閉じる。耳を赤くして視線をそらせた彼は大きな舌打ちを響かせた。
「チッ! いい度胸だ、俺らのチームを人捜しに使うなんてよぉ……」
 ギアッチョはそう言って彼女の隣にドカッと腰を下ろした。組織を率いるDIOとジョルノの身内と言うだけで利用価値は計り知れない事を当の本人は知らされていない。もしその身に何かあれば大変な事態に陥るのもこの様子では分かっていないのだろう。
 ギアッチョは盛大なため息をこぼしつつ、こちらを嬉しそうに見つめてくる夢主に視線を戻した。
「何だよ、泣いてたのか?」
 頬に涙のあとを見つけて眉を寄せる。家族の問題に立ち入るべきではないと理解しつつも聞かずにはいられなかった。
「何があった?」
「……」
「? お、おい……」
 途端に顔を曇らせて目を潤ませる相手にギアッチョは焦った。一方的な暴力で尋問するのは得意でも、こうした状況には慣れていない。いつもなら面倒くさいと別の仲間に丸投げするのだが、残念ながらこの場にはギアッチョしかいなかった。
「やめろ! まるで俺が泣かせたみてーじゃねぇか!」
「だって……思い出したら悲しくて……」
「なら思い出すな! 今すぐ忘れろッ」
 ポケットに入っていたクシャクシャなハンカチを取り出し、涙をこぼす夢主の顔に強く押しつける。それから興味本位でこちらを見つめる他の乗客を近くから追い払った。
「ギアッチョや先生の言う通りだね。すぐに忘れるのは難しいけれど……」
「アァ? 先生? 誰のことだ?」
「昔、私に作法を教えてくれた家庭教師の先生が言ってたの。男性が愛人を作るのはよくあることだから、気にしないで家庭を守りなさいって」
 今思えば下層出身でありながら貴族の子女として嫁がされる夢主を思っての助言だったのだろう。幸せの幻想を抱く前に現実を知っておけば落胆は少なくてすむ。しかし当事者になってしまうとその慰めの言葉も空虚なものだった。
「責め立てて嫌われたくないの。だって、ディオに嫌われたら……」
 今更、行くあても帰る場所もない。すべてを分かり合えるのは世界中探しても彼だけだ。果てしない孤独を埋めてくれるのもディオしかいなかった。
「お前らなァ……。散々見せつけといてこれかよ」
 牽制するように目の前で交わされた指輪は何だったのか。ギアッチョは再び舌打ちをして、自身の髪をぐしゃぐしゃとかき混ぜる。
「……とにかく、泣くのは後にしろ。次で降りるぞ」
 周囲の目が邪魔だし、このまま素直に屋敷へ帰すのも気に食わない。ギアッチョはチーム行きつけの店で休ませ、彼女が落ち着いてから行動を改めることに決めた。


 打ち寄せる波に笑い声と食器がふれあう音が混じっている。
 昼を迎えた海沿いのレストランは大賑わいだ。内外からやってきた人々の胃袋を満たすために、スタッフたちがテーブルの間を忙しなく行き来している。空いた席もすぐに埋まるほどの繁盛ぶりを見せていた。
 そんな店内をちらりと確認した後、リゾットは店主の案内で別室から続く階段を駆け上がった。二階奥の扉には一人の若いギャングが突っ立って、暇そうに大きなあくびをついている。こちらに気付いた瞬間、バツが悪そうにしながら背筋を正すのが見えた。
「彼女は?」
「中でギアッチョとプロシュート兄貴が守ってます」
 ペッシの報告に頷き、リゾットは素早くドアをくぐり抜ける。用意された個室は広く、二つ並んだテーブル席には軽食と飲み物が用意されてあった。手前にいたギアッチョが最初に振り向き、コーヒーを飲んでいたプロシュートも、
「よぉ、遅かったな」
 そう言って安堵の表情を浮かべるリゾットに笑いかけた。
「状況は?」
「何の進展もねぇよ。強いて言えば、ギアッチョが俺のピッツァを食べちまった事かな」 
「ケッ、文句の多いヤローだ。注文すりゃあいいだろーがッ」
 些細なことで言い合うプロシュートとギアッチョの間を抜けて、リゾットは立ち尽くす女性に近づいた。
「あの……」
 大きく開かれた窓際から身を離した夢主は、近付いてくる相手をそろそろと見つめ返す。
「迷惑をかけてごめんなさい!」
 勢いよく頭を下げて謝罪するとリゾットの硬い表情が少し緩んだ。
「これも俺たちの仕事の一つだ。気にしないでくれ」
「でも……」
 不安そうにこちらを伺う様子は、まるで親の怒りに怯える子供のようだ。
「次からは言付けを残すか、我々の誰かと行動してもらえると助かる」
「はい……。必ずそうします」
 お互いにホッとした表情を浮かべて小さく微笑みあう。プロシュートたちがそれを珍しそうに見つめる中で、リゾットは壁に掛けられた時計を確認した。
「もうすぐここにジョルノ様が到着する。お前たちは引き上げて、この事をあの方に報告しろ」
 それを聞いたギアッチョは顔を歪め、プロシュートも面倒そうな表情を見せた。
「俺は忙しいから無理だな。ギアッチョ、お前ひとっ走り行ってこい」
「ハァ?! 見つけ出したのは俺だぜ!? テメーの舎弟に行かせろ!」
「ペッシにはドアを守る重要な任務があるだろ。お前が行け」
「犬でも出来るような事を任務だと? テメーが行け」
 プロシュートが笑いながら煙草の煙を相手の顔に吹き付けると、ギアッチョの額に浮かぶ青筋が誰の目にも分かるほどピクピクと動いた。
 時間がない中、睨み合う二人をリゾットが諫めようとした瞬間、服の端をツンと引っ張られる感覚があった。
「あの……みんなに居てもらうことは出来ませんか?」
「あぁ? 何だと?」
 ギアッチョから聞き返されて、夢主は小さな声で答える。
「だって、せっかく会えたし……」
「えらく懐かれてるじゃあねぇか。え、ギアッチョ?」
 プロシュートからニヤニヤと笑われて、ギアッチョは眼鏡の奥の目を泳がせる。満更でもなさそうなその態度にプロシュートは笑い声を上げた。
「あんた、こんな危険人物を愛人として囲うつもりか? 浮気された腹いせのつもりなら止めた方がいい」
「そ、そんなつもりは……。ただ、一人で会うよりはみんなが居てくれた方が心強いと思っただけで……」
「ああ、息子に叱られるのが怖いのか」
 プロシュートに正面から指摘されて、夢主は恥ずかしそうに顔を隠す。部屋中に響く笑い声に身の置き場を無くしていると、不意にドアが開いてペッシが顔を見せる。彼の強ばった顔付きにプロシュートはぴたりと声を収めた。
「あ、兄貴……来やしたぜ!」
 彼の言葉の後に年若い二人組が部屋に入ってくる。宙に浮かぶプロペラ機体と、紫色をした落ち着かない様子のスタンドを従えた彼らは、周囲をぐるりと見渡してからリゾットに視線を留めた。
「部屋にいるのは四人。入っていいぜ」
 ナランチャの後ろからミスタとアバッキオ、そしてブチャラティが続けて部屋に足を踏み入れる。最後に彼らが作った道を通ってくるのはジョルノだ。
「部外者は出てもらおう」
 ブチャラティの言葉にプロシュートは煙草の火を消し、ギアッチョは顔を歪めながら渋々と腰を上げた。リゾットも一歩を踏み出そうとしたが、背後から服の端を捕まれていてはそれも出来なかった。
「待って……少しだけ……」
 そう言って不安そうな声で引き留めてくる。リゾットは部下の二人に自分を残して出て行くよう目配せした後、その場に立ち尽くした。
「マードレ」
 ジョルノの静かな声に夢主の体が跳ね上がる。近づいてくる足音になぜか冷や汗が出た。
「見つかって良かった。事故や怪我でもしたらと、本当に心配したんですよ」
 リゾットの後ろに隠れた夢主を、ジョルノは困り顔で覗き込んでくる。
「前回もそうでしたが、意外と行動派ですね。驚きました」
「ごめんなさい、ジョルノ……!」
「時々、無茶するところも素敵ですよ」
 飛びついてきた相手の体を強く抱きしめ、涙のあとが残る頬に軽いキスを落とした。
 

 この場で少し話がしたいというジョルノの提案から、テーブルの上には酒瓶とグラスが並べられ、それらのつまみを下のレストランからペッシが運び入れてくる。
 外へ追い出されたプロシュートとギアッチョもすぐに呼び戻されて、ボスから直々に感謝されるのをひどく戸惑った表情で受け止めていた。
 それぞれのチームが酒を飲みながらぎこちない談笑を交わす中、ジョルノは隣に座った母の手を取りながらリゾットにグラスを掲げて見せた。
「あなたには僕の母を二度も助けてもらいましたね。きっとこれからも両親のことで世話を掛けると思いますが……その時はよろしく」
 心得ているというようにリゾットは頷き、まるで姉と弟のような年若い親子を見つめながらワインを口に含む。
「テレンスには先ほど連絡を入れておきました。僕もそうですが、あまり彼に心配を掛けさせないでくださいよ。髪が真っ白になりそうなほど動揺していましたから」
「本当にごめんなさい……」
 肩を落としてうなだれる夢主の手を、ジョルノはそっと包み込んだ。
「それで、マードレはこの後どうするつもりですか? 息子の意見を言わせてもらえるならば……あの屋敷を出て、僕と一緒に暮らすのが最善のように思えます。空き部屋はいくつもありますし、引っ越しの手配も任せて下さい」
 にこやかな息子の笑顔を夢主は驚きを持って見つめ返す。
「えっ……引っ越し? ジョルノと一緒に住めるの?」
「ええ。そこには海を見渡せる広い庭があります。好きなところに好きなだけ花を植えることも出来ますよ。ヴィクトリア調の家具がよければ用意させましょう。明るい空の下で、波を見ながら過ごすなんて素敵だと思いませんか」
 確かに心引かれる申し出だが、一つだけ引っかかることがある。
「でも、ディオは……?」
「パードレは今まで通り暮らせばいい。僕ら二人だけです」
 ディオと離れて息子と二人で暮らす。夢主にはこれまで想像したことのない生活だ。思わず呆然とする母親にジョルノは優しく諭した。
「浮気した相手など忘れて、新たな人生を歩むべきだと僕は思います」
 ジョルノの言うことが咀嚼できず、夢主は苦しそうに眉を寄せる。
「少しも側から離れず、朝と夜に欠かさず目覚めのキスをして、あれほど夫婦仲の良さを見せておきながら……僕に弟がいた時のショックが分かりますか? 身勝手なパードレなんか僕はもう知りません」
 目に静かな怒りを湛えてジョルノは真っ直ぐに見据えてくる。夢主はその傷ついた想いを受け止めながら、繋いでいた手を強く握り返した。
 ディオが昔から目立つ存在なのは嫌と言うほど理解している。美しい彼なら薄く微笑むだけで女を簡単に陥落させるだろう。
 愛を授かったのは己だけではない事実に確かに心は傷むが、それだけで嫌いになれるなら、これほど長く一緒に暮らしてはいない。
「ごめんね、ジョルノ。それでもディオが好き」
 ロンドンの薄暗い路地裏で彼の背中を見て育ってきた。背伸びをするように追いかけて、時々見せてくれる笑顔に何度救われたことだろう。悔しさや悲しみに負けて涙をこぼす夢主を、もう泣くなと言いつつ最後まで見守ってくれたのは彼だけだ。呆れたように、慰めるように、淡く微笑むディオへの想いが夢主の全てだった。
「その言葉……パードレに聞かせたら駄目ですよ。あの人、すぐ調子に乗りますから」
 悔しさと安堵を織り交ぜつつ、ジョルノは息を吐いた。長年ため込んでいた胸のつかえが宙に溶けていくようだ。
「なんつーかさぁ……お前のとこも大変なんだな」
 それまで近くで警護をしつつ、耳を大きくして話を聞いていたナランチャは訳知り顔で頷く。母を病気で亡くし、父に愛されなかった自身の過去も含めて、世の中には様々な家庭問題があるらしい。
「ジョルノに弟か〜。めちゃくちゃ生意気そうだけど、家族は減るより増えた方が嬉しいよな」
 無邪気なナランチャの一言に夢主は目を見張った。
(家族……)
 その昔、ジョースター卿に言われたときはピンと来なかったが、今なら分かる気がした。愛するディオとその息子のジョルノ、揺るぐことのない確かな繋がりに夢主の胸は温かくなる。
「本当は六人家族だったのね」
 早くに親を亡くし、ブランドー家やジョースター家でもそれは長く続かなかった。それなのに、今では自身が親の立場でディオの息子が四人も存在する。
「ありがとう。何だか考えがまとまってスッキリしたわ」
 愛人が居ようと何だろうと、別に悲観することは無いのだと悟った夢主は、救いの言葉を投げ掛けてくれたナランチャに笑顔で礼を言った。
「ヤベェ……俺、もしかして余計なコト言った?」
 離婚を後押ししたのでは、と青くなるナランチャにジョルノはワインを注いだグラスを手渡した。
「僕が想像した以上に、円満な解決を迎えたみたいですよ。今夜はお祝いですね」
 胸をなで下ろしたナランチャは警護中ということも忘れて一気に飲み干す。胃に酒が入ると、これだけでは足りないとばかりに彼の腹の虫が鳴った。
「おい、ミスタ! 自分ばっかり食っててズルいぞ! フーゴでも誰でもいいから交代してくれよ!」
 料理が並ぶテーブルへすっ飛んでいくナランチャを見て、夢主もようやくグラスに手を伸ばす気になった。昼食と言うには遅すぎるが、食べ損ねていたので空腹だ。屋敷に帰ってディオと何を話すのか……それは後でゆっくり考えればいいだろう。
「ねぇ、ジョルノ。ディオとテレンスさんには悪いけど、もう少しここに居てもいい?」
 ジョルノはもちろんだと頷きながら、
「何があろうと僕はマードレの味方ですよ。だから遠慮せず、思ったことをすればいい。僕としては、平手打ちをされて慌てふためくパードレの顔が見てみたいですね」
 そう言ってジョルノは母親に微笑みかける。
「まぁ……ジョルノったら。そんな事しないわ」
 朗らかに笑う夢主の手元でワイングラスがキラキラと輝いた。ようやく笑顔を浮かべるようになった彼女を、それまで近くで観察していたリゾットと誰よりも心配したジョルノが優しく見つめ返した。


 青かった海面が次第に闇色へ染まり、星と月の明かりを乗せた波が岸に打ち寄せている。昼間と比べると、幾分か落ち着きを見せたレストランの入り口横では、派手なスーツを着た男たちが静かに語り合っていた。
「もうすぐあの方が到着するそうだ」
 そう言って携帯を切ったのはリゾットで、彼の後ろでは赤ら顔のギアッチョとプロシュート、それからペッシが立っている。
「そうか。では後のことはジョルノに任せておこう。俺たちはあの場にいない方がいい」
 ブチャラティは背後に控えたフーゴに視線を向ける。有能な部下はすぐに駐車場へ向かい、止めてあった車にエンジンをかけた。
「ここは俺が残る。ミスタ、アバッキオ、ナランチャは先に帰ってろ」
「いいのかブチャラティ。揉められると長いぜ?」
 アバッキオの笑いを含んだ声に肩を竦め、
「気にするな。リゾット、お前たちも乗っていくか?」
 と暗殺チームに話しかけた。
「おお、悪いな。そいつは助かる」
 プロシュートは吸っていた煙草を消し、車を待つミスタの横に並び立つ。ペッシはそれを慌てて追いかけ、ギアッチョもふらりとした足取りで彼らの元に向かった。
「まだ飲み足りねぇな。どこかに飲みに行くか」
「おっ、いい事いうじゃあねぇか。その話、俺は乗った」
 プロシュートとミスタの会話を聞いてアバッキオは短いため息を吐く。
「お前らな……。まぁいい、じゃあいつもの店で飲み直すとするか」
 呆れたのは数秒だけですぐに飲み仲間に加わった。ギアッチョとペッシもそれに異存は無いようで、フーゴが運転する車に次々と乗り込んでいく。
「まだ飲むつもりかよ……って、オイッ! 俺の座る場所は!?」
「これ以上は無理ですよ。もう一台でブチャラティたちと帰って下さい」
 ドアを閉めたフーゴからそんな去り際の一言をもらい、ミスタからは優越感に満ちた表情で手を振られてしまった。
「ズルいぞッ! おい、待て、この……ッ!」
 その場にナランチャとブチャラティ、リゾットを残して車は大通りを走り去っていく。
 と同時に、一台の黒い車がスーッと入ってきて横付けに停車した。車内から出てきた一人の男にその場の全員が得体の知れない圧迫感を感じ取った。


 外で待機していた護衛と暗殺チーム、それから一般席へ案内しようとする店員を無視して、DIOは別室から上に続く階段へ足を向けた。一歩進むごとに煙草と酒の匂いが上階から流れてくる。スタンドの拳で殴り抜けたくなる気持ちを抑えて扉を開くと、ますますその匂いが強くなった。
「遅い到着ですね、パードレ」
 海が見える窓に背を預け、ジョルノはワインではなく炭酸水が入ったボトルを傾けた。
「……フン」
 夜の間しか動けない者への嫌味をDIOは鼻先で笑い飛ばし、それから素早く部屋を見渡す。
 ソースだけが残った皿の山、飲み干された空き瓶とグラス、煙草を押しつけた灰皿からはまだ微かに煙が立ち上り、浮遊する男物の香水と混じり合っていく。そんな辺りに漂う淀んだ空気に不快感しかこみ上げてこない。DIOは眉を強く寄せて壁際に置かれたソファーへ近づいた。
「見つけ出したのなら、何故すぐに連れ帰らない」
 今にも牙を剥きそうな不満声にジョルノは小さく笑いかける。
「帰りたいと思いますか? 浮気された相手のところに」
「ここよりはマシなはずだ」
 DIOは言うが早いかスタンドを出し、部屋にあった全ての窓を開け放つ。外から流れ込んできた海風がその昔パブで慣れ親しんだ匂いの全てを洗い流していった。
「夢主、帰るぞ」
 ソファーへ横になり、こちらに背を向けた相手に話しかけてみるが返事は無い。肩に掛けられたジョルノの上着を落として顔を覗き込むと、ここ数十年、DIOが毎日眺めてきた寝顔があった。
「無駄ですよ。酔いつぶれて深く寝入ってますから」
 息子の言葉通り彼女は赤い顔をして眠り込んでいる。
「どれほど飲ませた? いつからこの状態だ?」
「さぁ……色々と悩んでいたせいで、ペースが速かったように思いますね。気が付いたときには僕の隣で眠っていましたよ」
 そんな説明を聞きながらDIOは強引に夢主の体を抱え上げた。
「どこへ連れて行くつもりです」
「私の部屋以外に選択肢があるのか?」
 ジロリと鋭く睨まれるがジョルノも引き下がるつもりはない。
「ええ。この海岸の先に僕の家があります。日中は明るくて過ごしやすいし、海と市場が近くて便利ですよ」
「お前の側に居させるのは誕生日だけで十分だ」
 ジョルノはDIOの言葉に目を見開き、しばらくして堪えきれずにクスッと笑った。相変わらず何を考えているのか分からないが、以前よりは理解しやすくなったように思う。
 そうして忍び笑う息子に背を向けたDIOは、入ってきた扉から廊下に出る。夢主を抱えたまま、階下で食事を楽しむ人々の声に向けて階段を下り始めると、胸元から小さな振動が伝わってきた。狭い階段の踊り場で足を止め、少しムッとした表情で相手を見下ろす。
「いつから起きていた?」
「……ディオが入ってきた時からよ。だって大きな音だったから」
 ゆっくりと顔を上げ、恥ずかしそうな笑みを見せる彼女にDIOの表情がわずかに緩む。
「それで? ジョルノとリゾットたちを振り回し、テレンスを吐き戻すほどに混乱させ、私を一人きりにさせた今日という日は楽しかったか?」
「勝手なことしてごめんなさい……でもそれは……」
 原因を作ったDIOを恨めしそうに見上げると、こちらを真っ直ぐに射抜く目と合った。
 凛々しい眉にスッと通った鼻筋、妖しい口元からは鋭い牙が垣間見える。手を伸ばせば触れられるところに、長年見てきた金色の髪が揺れている。どこから見ても隙のない格好良さは全ての人に自慢したくなるほどだ。
「ディオって本当に……昔からそうよね」
 一人で成長してあっという間に大人になっていく。夢主は彼に追いつくだけで精一杯だ。思わず悩ましい息をつくとDIOの眉がぴくりと動いた。
「何だ、怒っているのか? 弁明するつもりはないが、この私が指輪を贈ったのはお前だけだぞ」
 そう言われて夢主は左の薬指に輝く金属を見た。
「怒ってなんかいないわ。ただ……私は家族になりたいの」
 息子たちの年齢や境遇を越えて一つになりたい。夢主の望みはそれだけだ。
「俺たちが小さい頃にはすでにそうだったように思うが……お前は違ったのか?」
 今日は何度も彼の言葉に驚かされる日のようだ。夢主は胸からこみ上げてくる熱い想いに笑顔を浮かべながら、不機嫌そうなDIOの首に抱きついた。
「違わない。ずっとそうよ。でも……もう少しだけわがままを言ってもいい?」
 視線で続きを促してくる相手の耳に唇を近づける。告げられた内容にDIOは驚きつつも、今後は無茶をしないという約束のもとにその願いを叶えてやることにした。


 眩い太陽の下、再び庭先でランチを楽しむべく執事のテレンスが忙しなく歩き回っている。大量の取り皿とカトラリー類をテーブルに並べて回る彼の背後で、夢主は大きな花瓶に花を生けていた。
「ねぇ、ジョルノ。この花はどう思う? こっち側がいいかしら? それともやっぱり反対側の方が……」
 並べられた椅子の一つに腰掛ける息子を振り返って夢主は彼に意見を求める。
「その位置の方が見栄えがいいと思いますよ」
 足を組みつつ笑顔を浮かべたジョルノの言葉に従おうとした時、彼のすぐ近くに茶色い小包が置かれてあることに気付いた。
「郵便? ジョルノが受け取ってくれたの?」
「ええ。テレンスもマードレも忙しそうだったので、僕が受け取っておきました」
「ありがとう。宛名はテレンスさんね」
「この重さは彼の趣味の物でしょう。中身の大体の想像はつきますが……後で渡しておきます」
「そうしてくれる? ところで、今は何時? ジョルノのお友達が到着するまで、もう時間が無いように思うけど」
「そうですね、あと15分ぐらいでしょうか」
 それを聞いて夢主は慌てて残りを片付けにかかる。角度を変えて調整しつつ、切り落とした茎や葉を集める彼女の邪魔にならないよう、ジョルノは小包を持って屋敷の中に戻った。
 明るい外とは一転してそこは暗くひんやりとした空気が満ちている。唯一、温かく美味しそうな香りが漂うキッチンに顔を出すと、予想した通りテレンスがそこに立って料理を盛りつけていた。
「おや、ジョルノ様。どうされました?」
「テレンスに荷物が届いてるよ」
 手間を掛けさせた事を詫びつつ執事はにこりと笑う。
「ああ、ようやく仕上がりましたか。どうぞ中を開けて、DIO様や夢主様と一緒にご覧下さい」
 そう言ってテレンスは再び作業に取りかかる。ジョルノはその場で包みを破り、繊細な模様で彩られた白い化粧箱の蓋を開けた。中に入っていたのは美しい装丁が施された一冊のフォトアルバムだ。表紙を開いた先に三人の腹違いの弟たちとジョルノ、それから笑顔を浮かべる母親と、どういった顔をすればいいのか分からないでいるDIOの姿がある。あの大騒動の後、アメリカに渡って六人で撮った家族写真だった。
 無事、撮り終えるまでにも一悶着あったが……今ではいい思い出だと言えるだろう。
「マードレが楽しみにしていたアルバムですね」
 出来上がるのを今か今かと待ち望んでいた品物だ。ジョルノは母の喜ぶ顔が見たくてすぐにその場を後にする。
「マードレ?」
 庭先に夢主の姿は無かった。飾り終えた花瓶だけが残るそこから辺りを見回すと、ジョルノが出てきたキッチンからさらに奥……光の届かない暗がりの向こうに二つの人影が見えた。それが余った花を手にする夢主と、その身を抱きしめるDIOの姿だと知り、ジョルノは息を潜めて立ち止まる。
(そう言えば昔……)
 幼い頃、窓辺で身を寄せ合う両親を見て、堪らず駆け寄った事がある。その時と同じ光景を感慨深く見つめていると、DIOが体を屈ませて顔を近付けていくのが目に映った。
 眠り続ける相手への一方的な口付けとは違う。腕を首へ回し、つま先立ちをして受け止める夢主に、DIOはとろけそうな笑みを浮かべている。
 ジョルノは両親の仲睦まじさにホッとする反面、妙な気恥ずかしさに包まれてしまった。
(また家族が増えそうだ……)
 アルバムを届けるのはもう少し後の方がいいだろう。そう判断したジョルノは静かに庭へ戻り、のどかに広がる青い空を眺めることにした。

 終




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