33333hit小説 | ナノ
木に手をつきながらなんとか立ち上がり、ベンチまで戻る。ドサリと腰をおろして靴を脱いでみると、靴下の上からでも腫れてるのが見えた。恐る恐る靴下を捲れば青紫色をした足首が顔を出す。…見なかったことにしたい。靴下を戻して足を投げ出す。揺れただけで痛むそれに顔を歪めながら、ゆっくりと動かしてみる。鮮烈な痛みが走るがちゃんと動くし折れている訳ではない。腫れあがってるから折れたかと思ったよ…。
これで歩いて帰るのは無理だ。苦行すぎる。スタンドで帰ればいいが、いきなり家の中に現れる訳にもいかない。行けて玄関の前までだ。そこから数歩でも歩かなければならないと考えるとそれすら嫌になる。一歩も歩きたくない。

それしか方法がないと分かっていながらもダラダラと時間をやり過ごし、いつの間にか夕陽が輝く時間となってしまったのだった。
真っ赤に輝く夕陽を眺めながら、帰らなきゃな、と小さく呟いてみる。うん、口に出したら帰らなきゃって気になってくるよね。傍らに置いてあった本を手に持ち大きく深呼吸する。ちょっとくらい痛くても我慢しろ私。意を決して立ち上がろうとした私の視界に影が出来た。俯いていた顔を上げるとそこには見慣れた顔が有った。


「承太郎?」

「何やってんだお前」


承太郎の片手にはお醤油らしきものが入ったビニール袋が有った。どうやら買い物に行った帰りに通りかかったらしい。承太郎に醤油って似合わないよな、なんて思っていると承太郎は脱ぎ捨てられた靴を見て訝しげにしていた。


「…あー、色々とありまして」

「色々ってなんだ」

「…猫助けようとして木から落ちて捻挫しました。」


木の方を指させば、承太郎は折れた枝と私を見比べてからそれはもう大きなため息をくれた。


「助けてお前が怪我してりゃ世話ねーな」

「なんの申し開きも出来ません…」


ははは、と乾いた笑いをする私にもう一度ため息をつくと承太郎は後ろを向いてしゃがみ込んだ。


「乗れ」

「はい?」

「その足じゃ歩いて帰れねえだろ」


早くしろ、と言う承太郎に急いでスニーカーと本を手に取る。が、中々背中に乗れない。…だっておんぶって、おんぶって!抱き上げられる以上に恥ずかしい気がするのは私だけだろうか。


「おい」

「は、はい?」

「さっさとしろ」

「…はーい」


覚悟を決めて承太郎の背中に乗り首に腕を回した。



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