月の無い夜、私とDIOはカイロの街を彷徨っていた。
「茉莉香」
「はい?」
「…ここはどこだ?」
「…どこでしょうねえ?」
足を止めて周りを見回す。しかし、二人気の向くままに迷路の様な路地から路地へと渡って来たので、ここが一体何処だか方向音痴の私に分かる筈がない。というか、いつもDIOが覚えていてくれてるから気にしてもいなかったのだ。
「DIO覚えてないの?」
「ああ、気にしてなかったからな」
「そっか、まあいざとなればスタンドで帰れるしね」
「そうだな」
ふと空を見上げれば月がないせいで星がいつもよりも明るく見える。星に詳しくはないのでなんの星座だとかは分からないが綺麗だと素直にそう思った。隣のDIOを見れば彼も私にならって空を仰いでいた。星明かりだけで普段よりも暗い筈なのにくすみ一つない金の髪がキラキラと光っているかのようだ。度を越したイケメン怖い。
「…なんだ」
「いや、相も変わらず綺麗な顔してると思って」
「なんだそれは」
馬鹿にするように鼻で笑うと、空から顔を戻す。すらっとした鼻筋が小憎たらしいね全く。
「行くぞ」
「あ、うん」
先に歩き始めたDIOを慌てて追いかける。隣に並ぶと特に言葉を交わす訳でもなく、行くあてもなく歩き続ける。
というか、一体何故私達は会話もなく歩き続けているのだろうか。館に遊びに来て、DIOに散歩行くぞと連れ出されて。当初は色々と話していたが、気付けば二人口を噤んでいた。散歩も嫌いではないし、DIOと二人無言で居るのが気まずいという間柄でもない。しかし、もう小一時間は沈黙したまま歩いている訳で。
「ねえ」
「なんだ」
「なんで急に散歩とか言い出したの?」
元々DIOはあまり出歩くタイプではない。基本的には餌を探しに行くくらいだ。いやたまにフラッとアメリカに行ったりしてたけど。そういえばプッチは元気だろうか。
「…特に意味はない」
「その一瞬の間が気になるけどねー」
「…」
話す気はないのか歩調が早まったDIOに小走りで近づく。コンパス自体が違うのだからDIOが普通に歩くだけでも付いて行くのが大変なんだから早足とか勘弁して頂きたい。
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