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読んでいた雑誌から目を離してテレビ画面に齧り付くようにする二人を眺める。私が見ていることも気付かずに二人―テレンスさんと典明君はゲームに熱中していた。


「テレンスさん」

「すいません、今手が離せません」

「典明君」

「ごめんね、ちょっと待ってくれるかい」


…さっきからこのやりとりは何度めだろう。お前らのちょっととは如何程なんだ。


事の発端は私がDIOの所に行くと承太郎にバレた事だった。事前に言っておけば良かったのだが、言うと気を付けろだのDIOに釘刺しておくかなど面倒くさいことになるので言わなかったのである。そして、出かけようとしたら見つかった。どこに行くか即座にバレ、承太郎はおれも行くと言ったが彼には大学で外せない講義があり、代役として白羽の矢が立ったのが典明君だったのだ。
まあ、そうなったものは仕方ないと典明君を連れて館へ着くと、いつも通りテレンスさんが迎えてくれた。…これが不味かったのだと今なら分かる。典明君が居ても直接寝室に行けば良かった。


『…久しぶりですね花京院』

『そうだね、元気そうでなによりだよ』

『あなたのご友人のせいで最近まで床に伏せっておりましたがね』

『…うちの兄がすいません』

『あなたは悪くないんですからそんな顔しないでください』

『させたのは君だろう』


皮肉に満ちた言葉と視線が飛び交い、売り言葉に買い言葉が続く。そしてヒートアップした二人は決着を付けると言ってゲームを始めたのだった。


始めはそれなりに楽しかった。二人の実力は切迫していたので白熱した展開だったし。しかし、テレンスさんが勝てば典明君がもう一回だ!と叫び典明君が勝てばテレンスさんが認めませんよ!と怒鳴る。その繰り返しでもうかなりの時間が経ってしまった。
雑誌を放り出し立ちあがる。長時間同じ姿勢だったせいか身体が悲鳴を上げていた。きっと私以上に身動ぎせずにいる彼らも同じ状況なのだろうが…。


「テレンスさん、典明君。私DIOの所行っていい?」

「駄目です」

「駄目だよ」

「…なんで」

「私の方が上だと言う証人になってもらわないと」

「ああ、それには同意するよ、でも上なのはぼくの方だ」

「はっ、負け越してる人が何を言ってるんですか」

「今まさにイーブンになろうとしてるんだがな」


またもや私の事を忘れて言い合う二人にげんなりとする。というか嫌みの応酬をしつつ、指は凄まじい早さで動いてミスもしないというのはどういうことか。お前らその努力を他に向けろよ。苛立ちが募り、私は凶行に出た。ゲーム機から伸びているコンセントを持ち、全力で引っ張る。ブチン、という音と共に画面が暗くなり二人分の悲鳴が上がった。



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