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それから年越しそばを茹でて、三人仲良く食べる。丁度食べ終わった頃に鳴り始めた鐘の音に耳をすませた。パードレと姉さんも手を止めている。
「こうして父さんも一緒に年越しするって初めてじゃない?」
「ああ、そう言われてみればそうだな」
「仕事に関しては無責任じゃないですもんね」
「…それはどう言う意味だジョルノ」
「別に。深い意味はないですよ」
「もう、こんな時まで父さん苛めないの!」
めっ!なんて幼い子供にやるようにぼくを叱ると、姉さんはパードレの頭を撫でて慰め始めた。肩を竦めてテレビに目を向ける。
「あ、カウントダウン始まりますよ」
「本当ね」
パードレも勢いよく頭を上げる。姉さんに慰めてほしくて落ち込んだふりをしていたのだろう。呆れたように見れば視線を逸らしながら笑っていた。
「10!9!8!」
一人楽しそうにカウントダウンしていた姉さんがこたつに置かれていたぼくらの手を取る。にこにこと笑う姉さんに何も言えなくてそのまま三人一緒にカウントダウンをした。
「明けましておめでとうございます」
「おめでとうございます」
「ああ。おめでとう」
0を数えるとと同時に頭を下げた姉さんに倣う。そのまま挨拶を終えると姉さんはパードレに手を差し出した。
「父さん、お年玉くださいな」
「うむ。大事に使いなさい」
姉さんが渡されたお年玉はぽち袋ではなく封筒に入っていた。しかもそのまま立てられそうな厚みがある。どう考えても学生に渡す様な金額ではない。
「…本当にパードレって常識ないですよね」
「WRY!?何故だ!?」
「うーん、確かにちょっと多いかもしれないわね。ちゃんと貯金しなきゃ」
ほのぼのと笑う姉さんにちょっとではないだろうと言いたいのをぐっと堪えた。
「WRY…これはジョルノにだ」
「…どうも、ありがとうございます」
「ああ、お前の事だから心配はないが考えて使え」
「はい」
何度経験しても慣れない気恥ずかしさに責め立てられつつ封筒を受け取った。手に乗るそれは姉さんに渡したものと同様の厚みがある。最低でも半分は貯金しよう。稼ぎが多いせいか金銭感覚がずれているパードレに感化されてはならないと年の始めから強く心に刻んだのだった。
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