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side.D
結局承太郎と花京院は夜遅くなってから帰って行った。名前の作った御節とやらもちゃっかりと持ち帰っていることに少々苛立ちもしたが、なんとか許容してやる。
「さ、日付が変わる前に寝室の掃除しちゃおうか」
「…もういいではないか」
「そんな事言わないのー」
基本はテレンスさんがやってくれてるからシーツ変えたりするだけでしょ、と言いながら歩き出す名前にしぶしぶ従う。
「はい、そっち持って」
「なぜこのDIOがこのようなことを…」
「はいはい、ぶつぶつ文句言わない!」
洗剤の香りのするシーツやカバーをかけた名前は満足そうに笑った。後は床掃いて…と動きだそうとする名前の手を掴む。
「な」
に?と続けようとするが、それは叶わない。何故なら私が名前を抱きしめ、そのままベッドへと倒れ込んだからだ。
「ちょっ!あー…折角皺ひとつなく敷いたのに!」
眉間にしわを寄せる名前の額にキスを一つ落とす。
「どうせもう横になるのだ、問題あるまい」
「そういう問題じゃないの!まだお風呂も入ってないでしょ」
「入ればいいのか」
「…いやいや、まだ掃除残ってるし」
「問題ない。明日の夕方にはテレンスも戻ってくるのだろう」
問題あるよ!と叫ぶ名前を抱え上げ浴室へと運ぶ。始めは抵抗していたが、諦めたのかすぐ大人しくなった。
「…もう、まだやりたい所あったのに」
「しつこいぞ」
湯船の中私に寄り掛かりながら文句を言う名前の頭に顎を乗せる。うむ、丁度いい高さだ。
「おーもーいー」
「お前と違って中身が詰まっているからな」
「私の頭だって詰まってますー」
「おがくずか?」
「…もう少しましなものだと思いたいねえ」
私の軽口にころころと笑う。回した手に力を込めれば不思議そうに顔を上げた。お湯のせいか普段より赤い唇に口付けようとしたその時、名前が声を上げた。
「あそこ少し黴てる」
「…それがどうかしたか」
「今の内に掃除しなきゃ!」
黴取りなんてあったかなー。なんて呑気な事をいいながら他に掃除の必要がないかと浴室を見回す名前にすっかり興が削がれてしまった。とりあえずテレンスには帰ってきたら存分に嫌みをくれてやろうと心に決める。しかし。
「名前」
「んー?」
「…楽しいか?」
「たまには掃除も楽しいよー」
子どもの様に馬鹿みたいな顔で笑うから、なんだかそれもどうでもよくなってしまった。
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