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「…あなたはボスも、ブチャラティ達もトリッシュも…誰をも救おうとしていた」
「…」
「それは、一歩間違えば誰も救えないか、もしくは上手く行っても彼らからの信頼を失くしたかもしれない行為だ…。一体貴女は何故、そんなことが出来たんですか」
「我儘、だからかな」
「我儘?」
「そう、我儘」
頷きながらDIOやら承太郎やらディアボロやら親しい人間に口を揃えてお前は我儘だ、と言われた事を思い出す。全く、大概の場合彼らの為に必死になっているというのに恩知らずな奴らだ。…まあ、必死になっていること自体我儘と言えば我儘か、運命とやらを捻じ曲げ続けている訳だし。そのせいでどこか他の誰かが不幸になっている可能性は否めない。私の知ったこっちゃないが。
「助けられた相手が、私を嫌おうと憎もうと知ったこっちゃない。…まあ、出来れば仲の良いままが嬉しいけどね。…とにかく私は、彼らが生きていてさえいれば、それでいいってスタンスだから」
生きてさえいれば何とかなるものだ。救って欲しくなんてなかったと言われようが、私を怨もうが。生きてさえいてくれれば、いつかきっと笑える日が来る。そこに私がいなくてもいい。ただ、どんなことになっても生かし続ける。それが私の我儘だ。
「…それは結局その人達の為でしょう?」
「いいや、私の為だよ。救えなかったと自分で自分を憎むよりは他人に憎まれた方が楽だからね。自分が自分を嫌いにならない為に、やってることさ」
肩を竦める私にフーゴくんが渋い顔をする。賢い彼の事だ。きっとそれは結局は人の為じゃないかとか考えてるんだろう。ま、それも間違いではない。悩め若人よ。
「…そうまでして救いたいと思って貰えるあの人達が羨ましいです」
自分の中で答えを見つけたかどうかは知らないがフーゴくんがぽつりと呟いた。…何言ってんのこの子。
「君だって救いたいうちの一人だよ」
「え?」
「私は君が困ってたら君が嫌がろうが助けるよ。知らなかった?」
私の言葉に固まるフーゴくん。…本当に考えたこともなかったんだな。いやまあ別にいんだけど。
「…助けてくれるんですか?」
「もちろん。ああ、出来ればそう言う時は早めに頼って欲しいけど」
宣誓するかのように手を上げつつそう言えば、フーゴくんの顔が歪む。…え、なんか泣かせちゃったみたいな雰囲気止めてほしい。
「…ぼくも」
「ん?」
「ぼくも、あなたが困っていたら、助けます」
「うん?ああ、ありがとう」
いきなりの発言にびっくりしながらも頷いておく。うん、こういって貰えるのは本当に嬉しいしね!キラリと視界の端で太陽の光を反射した屋根が光った。思わずそちらの方を見る。おお、初日の出だ。
「…貴女が好きです」
「ああ、ありがと…って、え?」
キラキラと輝く太陽に見とれて適当に返事をしてしまったが、一拍置いて理解した言葉の意味に慌てて振り向く。そこには、真剣な顔でこちらを見るフーゴくんが居た。
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