「ブォン・ナターレ!」
「ブォン・ナターレ」
いきなり現れて元気よく挨拶をするナマエにつられてそのまま返せば満足そうに笑われた。
「もう、ナターレなのに書類に埋もれてるってどうなわけ」
「仕事は待ってくれないからな」
「そうですけどー」
ぶーぶーと文句を言いながら椅子を揺するナマエに仕事を続けるのを諦める。ペンを置いてナマエの方に椅子を回せば嬉しそうに飛びついて来た。
「流石イタリアーノ!女の子の為なら仕事くらい放り出さなきゃね!」
「どこにシニョリータが居るんだ。オレには我儘なマンモーナしか見えないが」
そういうオレに不満げに頬を膨らませて胸に頭突きを喰らわせてくる。相変わらず手が早いというか…。
「酷い!酷過ぎる!」
「本当の事だろうが」
咳き込みながらそう返せば、禿げろ!となんとも不吉なことを叫びながらオレの胸に顔を埋めた。
「てかさ、細すぎ。ちゃんとご飯食べてる?」
「最低限はな」
「もっとちゃんと食べなさい!」
机の上に置かれたサプリメントに気付いたナマエがたまにはデリバリーするか、などとぶつぶつと呟く。昔食べた素朴だが優しい味のナマエの料理を思い出してそれも悪くはないな、と思った。
それから取りとめもない会話を交わして、ナマエはオレに包みを手渡した。
「受け取ってくださいなー」
「ああ、グラッチェ。…すまんな、来るとは思っていなかったからなにも用意してない」
「ああ、いいのいいの。元気そうな顔が見れただけで十分だから!」
にこにこと笑った後、じゃあね!と手を振って去って行った。相変わらず忙しい奴だと思いながら、渡された包みに手を掛けた。
元気そうで何より!
包みの中に入っていたシャンプーと、黴ないように!と大きく書かれたメッセージカードにそんなに不潔に見えるか…?と落ち込んだのはまた別の話だ。
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