2012クリスマス | ナノ



「それにしても、本当に良かったの?」

「何がだい?」

「ん、いや…典明君も疲れてるんだし家でのんびりの方が良かったんじゃないかな、って」


二人並んでキラキラと飾り付けられたイルミネーションを眺めながら、ずっと思っていた事を聞いてみる。このイルミネーションを見終わったらホテルのディナーを予約してくれているらしい。そりゃこうして外に出て、イベントを満喫するのも嬉しいし楽しい。でも、別に典明君と過ごせるなら家の中でのんびり映画でも見るだけで十分だったりする。


「名前はそっちの方が良かった?」

「うーん、典明君と居られるならどっちでも構わないんだけど」


典明君の質問と同時にイルミネーションがチカチカと点滅しだしたものだから、ついそちらに気が行って思った事をそのまま口に出してしまう。まあ、本音だし聞かれて困るものでもないから構わないんだが。


「…名前ってさ、本当にいつもぼくが喜ぶことばっかり言ってくれるよね」

「そう?」

「うん、実はエスパーだったりしない?」

「なに変な事言って…」


笑いながら典明君を見ると、視線はイルミネーションに向けられていた。電飾の色が典明君の白い肌に映し出されてなんだか現実味がない。思わず言葉が途切れジッと見つめていると典明君もこちらを見る。


「どうしたの?」

「いや、美人さんだなあって」

「ふふっ、変な所も相変わらずだなあ」

「まあ、これが私ですし?」

「そうだね、…そんな名前がぼくは大好きだよ」


そう言う典明君が本当に柔らかく微笑み、慈愛に満ちた瞳で見てくるものだからたまらない。慌ててイルミネーションの方に顔を向ければくすりと笑われた。


「こっちから積極的に行くと照れる所も変わらないね」

「そ、そーですね」

「棒読みだね」

「そうですねー」


典明君の言う通り棒読みに返す私の脳内にはさっきの典明君の顔が繰り返し浮かんできていて。切りつけるような寒さだと言うのに、頬と繋がれた手だけが熱く感じた。お兄さん、お願いだから笑いながら手に力こめないでください。鼻血とか撒き散らして倒れそうです…。
そんな馬鹿な事を考えながら数分。どうにか顔から熱が引いてホッと一息つく。


「予約した時間には少し早いしどこかでお茶でもしようか」

「そうだねー、冷えてきちゃったし」

「さっきまで真っ赤な顔してたけど?」

「うっ…後で覚えてろよ!」


そんな軽口を叩きながら幻想的な空間から立ち去ろうとした時、思わぬ出来事が起こった。