買い物から帰るとアジトはキラキラと飾り付けられていた。うわあ、と喜ぶペッシと何とも言えない顔をするプロシュートに苦笑しつつ、未だに飾りを作ってる三人に声を掛ける。
「頑張ったねー!」
「ふふん!オレの力作だよ!」
「何言ってんだメローネ!お前遊んでただけだろ」
「そう言うイルーゾォも途中鏡に引き籠ってただろ。しょーがねーなあ」
「うーん、とりあえずお疲れ様ホルマジオ」
そう言えばオレだって頑張った!と騒ぐ二人を尻目にキッチンを覗けば、机の上は目が眩むほど美味しそうな料理で埋め尽くされていた。
「美味しそう!」
「おかえりー。後はケーキが焼けるのを待つばかりだぜ!」
「そっか、二人ともありがとね」
仲良くコーヒーを啜る二人に手を振って、リゾットの所へと向かう。扉を開ければ案の定書類に埋もれたリゾットが居た。
「ただいま」
「ああ、おかえり」
「今日くらい書類なんて止めたら?」
「そういう訳にもいかないだろう」
「でも止めたらって言ってるのはその書類の提出先だったりするんだけど?」
そう言えば漸く顔を上げてこちらを見るリゾットに微笑みかける。しかし、リゾットは顔をしかめた。…そんな見るに堪えない笑顔だったんだろうか。
「遅れれば遅れただけお前が処理するものが増えるだろう」
「少しくらい増えても困らないよ」
「…そう言う割には疲れている様だが」
「…それはリゾットも同じでしょ?朝言ったじゃん、今日はナターレなんだからゆっくりしなよ」
「…」
「…」
無言で見つめ合う事数秒。諦めたのかリゾットがペンを置き私を手招いた。素直に近付くとわしゃわしゃと撫でられる。
「えーっと、なんでしょうか」
「…気遣ってくれた礼とお疲れ様の意味を込めて、と言ったところだ」
「はあ」
「パーティーとやらが始まるまでどれくらいあるんだ」
「ギアッチョが出かけてるみたいだから帰ってきたら、かな」
「そうか。…じゃあそれまではのんびりするか」
そう言ってリゾットは棚から缶を出してきた。丸い缶の中にはクッキーが入っている。
「…ごめん、リゾットにクッキーのイメージはなかったわ」
「まあそうだろうな。ただ書類など頭を使う時に糖分は必要だ」
「ああ、なるほど」
書類の効率化を図る為のクッキーなわけだ。仕事熱心にも程が有ると思いながら手を伸ばす。立ち食いは行儀悪いが椅子はないし仕方ないだろう。
そう思ったのもつかの間。ひょい、なんて音が付きそうなほど軽くリゾットに持ち上げられて膝に乗せられる。
「リゾットさん、これはどういう…」
「立ちっぱなしでは疲れるだろう」
見上げた先のリゾットは何か問題が有るのか、という顔をしている。…この人本当天然と言うか何と言うか。気にしても仕方ないと私はクッキーに舌鼓を打つことに決めた。
←→