「…どういうことだ?」
数日後花京院に呼び出されて待ち合わせ場所に行くと、花京院と名前が居た。おれを視界に入れた途端名前の背筋が伸びて何もしてないのに悪い事をした様な気持ちになった。
「遊園地のチケット貰ったんだけど3枚あってさ。使わないと勿体ないじゃないか」
そう言って笑う花京院の顔に『面白そう』と書いてあるような気がしてならない。…こいつ本当にいい性格してやがるぜ。
それからのあいつの反応は推して知るべし。花京院を挟んで極力おれに近付かないように気を使いつつ、気になるのかちょこちょこと覗いていた。その姿が巣から顔を出しては引っ込める臆病な小動物に見えたのはおれだけではないだろう。そんな微妙な均衡が崩れたのは昼食の時だった。
「そろそろお昼にしようか」
「そうだね、おなか減ったよね」
「なににすんだ」
おれの声を聞いただけで肩を跳ねる名前になんだか憐憫にも似た感情がわき上がる。…おれが来ない方が確実に楽しめただろこいつ。
「折角だし屋台のものでも食べようか。ぼくあっちでケバブ買ってくるよ」
「じゃあ私は飲み物買ってくるね」
「おれは」
「あ、承太郎はどこかベンチでも取っておいてよ、君大きいからいい目印になるしさ」
人の事を目印扱いにすると花京院はさっさと歩いて行った。取り残されたおれ達の間に沈黙が横たわる。それを破ったのは以外にも名前だった。
「あ、あの!」
「…なんだ」
出来る限り穏やかに返したつもりだったが、功を奏したとは言えなかった。自分から声を掛けてきたくせにビシリと一旦固まってからもごもごと声を捻りだす。
「く、空条先輩はなに飲みますか」
「コーヒーで頼む」
「わ、分かりました!」
駆けだそうとした名前の肩を掴んだ。恐る恐る振り返った顔は引きつっている。まるでこれじゃおれが苛めてるみてえじゃねえかと眉間にしわが寄った。それを見て息を飲む名前に舌打ちをしたいのを堪えて小銭入れを渡す。
「それで買ってこい。お前らの分もそこから出しとけ」
「え、あ、でも」
「いいからさっさと行ってこい」
「は、はい!」
掴んでいた肩を離すと走って行った名前を見送り、側に合ったベンチに座る。いっそこのまま帰ってしまおうかとも思ったが、後で花京院に嫌みを言われるのも億劫で仕方なしに座ったままだった。
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