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Hello!Hello!




阿鼻叫喚と言うのはこういう事だろうと名前は遠い目をしながら考えた。目の前には両手では余るが、片手では足りない数の子供が甲高い声で騒ぎ立てている。この現象を引き起こした張本人は、今頃ベッドに倒れ込んで魘されているだろう。この場での唯一の救いと言えば、子供たちの中身がその姿通りではない、ということか。

遡ること数時間前。この館では酒盛りが行われていたらしい。そこにアレッシーがやって来たのだが、タイミングが悪かった。彼は体調を崩していて、館に居る人間はほぼみんな酒に呑まれてへべれけだった。危険を察知したアレッシーが逃げるのも間に合わず。飲めば治る!などというなんとも馬鹿らしいセリフと共に度数の高い酒を次から次へと飲ませたのだ。
結果、熱と酔いで制御が外れたスタンドは手当たり次第に周りの人間を幼い姿へと変えていった。誰も胎児まで戻ることもなく、記憶も引きずられることがなかったのはアレッシーに僅かばかり理性が残っていたのか、スタンドの判断だったのか。それは分からないが、もしこれで全員精神面まで幼子に戻っていたらきっと名前もお手上げだったろう。
とは言え、どうしたものかと名前の頭は痛んだ。記憶も精神面も変わらないのはダービー兄弟とダン、DIOのみ。残りは記憶が有るが精神面は退化していて、子どもと同じような振る舞いをしている。そして、DIOは子守という点ではてんで役に立たない。むしろ足手まといである。深々とため息をついた名前の足に何かがぶつかって来た。


「名前!デーボがおれの事なぐった!」

「お前がおれのめし食うから悪いんだろ!」

「はいはい、二人とも悪いんだからちゃんと仲直りしようねー」


ぎゃあぎゃあと言い合いをする二人に屈んで目線を合わせる。ふむ、こうして見るとラバーソールは面影が有るが、デーボさんは傷が無い分新鮮だ。こんな一面が見れたのは嬉しいかもしれない、などとなんとかポジティブな方向へと思考を持っていく。でなければ流石の名前も耐えられない。
なんとか二人を宥め終わると、今度は背中越しに叫び声が聞こえて振り返ればヌケサクが涙目で叫んでいた。

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