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Hello!Hello!




今日はツいてねぇ。ジジイ辺りに聞かれたら笑われそうなセリフだが、つい口に出してしまうのも仕方ねぇことだろう。
朝は躓いたおふくろにコーヒーをぶっかけられた。代えのズボンを引っ張り出して学校に向かえば、アホみてぇに飛ばした車を避けようと寄った壁際から飛び出していた釘で学ランが破けた。学校に行く気が薄れてゲームセンターに向かえばそこらの馬鹿どもに絡まれて。軽く伸したは良いが通りがかった警官に追い回されて。極めつけは家に着いたとたん名前に睨まれた。…一体おれが何をしたと言うのか。


「おい」

「なんですか」

「なんでんな顔してんだ」

「承太郎君の胸に聞いてみてください。言う事は有りませんか」

「…特に心当たりはないな」


そう言えば鋭い視線が一層鋭くなって。俯いた名前の唇が噛みしめられているのが見えた。やめろと言いたいがこうなった名前がどれだけ頑固かもよく知っている。きっと聞く耳を持たないだろう。
名前は隣に住む二歳下のいわゆる幼馴染…兼彼女だ。未だに彼女と言いきれないのは幼馴染として過ごした時間の長さと、それに伴う気恥ずかしさのせいだ。


「…今日、また喧嘩したでしょう」

「なんで知ってんだ」


あの時間は名前はまだ学校に居たはずだ。


「兄さんから聞きました」


その言葉に思わず舌打ちをしたくなる。そう言えば名前と年の離れたあの兄はあの近くの店で働いている。見られていてもおかしくないという事だ。


「承太郎君が強いのは分かってます。でも、絶対に怪我しないって訳じゃないんですよ」


強く握られた名前の手が震えている。それを見てあの旅から帰った時を思い出した。

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