形兆中編 | ナノ






私の可愛い妹にはとてもいい彼氏がいる。そんな彼氏…虹村億泰は勉強はできないけれど、それを補って余りあるほどの優しさも勇気も妹の名前に対する愛情もある。それに勉強も最近は妹の名前と一緒に頑張っているらしい。
そう、彼自体にはなんら問題のない、いい子だと思う。ただ、その彼に"憑いてる"奴が問題なのだ。

私と妹の名前には昔から人には見えないものが視えた。どちらか一人だったら、自分の頭を疑って発狂していたかもしれない。でも、私たちは支え合うことで乗り越えてこれた。私にとって妹の名前は最愛の妹であり、最高の戦友であり、なくてはならない片割れなのだ。
そんな妹の名前に彼氏が出来たのは嬉しい。幸せそうで彼氏が良い奴なら尚更。だけれど、あの子にあいつは視えていないんだろうか?そう考えると背筋がゾッとした。


「ただいま」

「おかえ、り…」


玄関から聞こえた声に顔を出せば、可愛い妹の後ろにアイツが浮かんでいた。慌てて見回すが億泰の姿は見えない。どういうことだろうか。いつも億泰の後にぴったりとくっついているくせに、何故妹の名前の後ろに居やがるのか。
もしも何か危害を加えるつもりで憑いて回ってるなら、とっとと寺にでも押し込んでやろうと睨みつけていると、妹の名前がにこりと微笑む。


「あ、お姉ちゃん紹介するね。億泰君のお兄さんで形兆さん」

「…は?」


億泰のお兄ちゃん?そう言えば亡くなったとは聞いていたけど。まさかコイツがそうだったとは。全く気付かなかった。だって目つき悪いし。いつも能天気な億泰と違って機嫌悪そうだし。全然似てない兄弟じゃん。
なんというかあまり良い印象はないが、可愛い妹が態々紹介してくれたのだ。姉としてちゃんと挨拶くらいしなくては。


「…どうも」

「お前も視えるのか」


…何こいつ。人が挨拶したのに完全スルーかよ。訳分からん。億泰のお兄ちゃんじゃなかったら塩撒くとこだよコノヤロー。


「ええまあ。…知ってるとは思いますが妹の名前の姉の名前です」

「知ってるのが分かってるのにわざわざ名乗る必要ねぇだろ」

…今はっきりと理解した。


「ごめん妹の名前、私こいつ嫌いだわ」


困ったように笑う妹の名前は可愛いけど、眉を寄せた奴は可愛げの欠片もありゃしない。




第一印象は最悪

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