※柱の男過去捏造あり
またニナは重力も何もない白い空間に居た。
「死後の世界も夢の中も変わらんものなんだな」
「勝手に殺すな」
ニナは声が聞こえた方に顔を向ける。そこでニナはようやく依然と違う点に気付いた。渋い顔でこちらを見る男の姿も、立ち尽くすニナの体もしっかりと見え、存在している。
「…はじめまして、でいいのかな?」
見覚えのない男だがその声には聞き覚えが有った。男――エシディシは軽く肩を竦めた。
「あー…これはどういう状況なのかな」
「どこまで覚えてんだ?」
「ん?…シーザーに覆いかぶさったところ、までかな」
「人が一番苦労したところ忘れてやがんのか」
「…うん、なんだか申し訳ないがそのようだ」
「…ったく」
しゃがみ込んでガシガシと頭を掻いたエシディシにニナは苦笑する。
「それで私は君に吸収されたとか、そういうことなのかな」
「だったらこんな所に居ねえだろうよ、俺もお前も」
だとしたら二人とも死んでしまったのだろうか。しかしそれは先程の彼の言葉とは矛盾する気もする。ニナが首を傾げているとエシディシが彼女を見上げてため息を吐いた。
「俺もお前もついでに言うとシーザーの野郎も生きてるぜ」
「それはあれだね、吉報と言っていいのかな」
「いいんじゃねーか?救いたかったんだろ」
「まあ、そうだね」
とりあえずニナも彼の動きに従ってしゃがみ込む。エシディシはもう一度ため息をついた。
「何が背中に波紋は流さねえ、だ。死にかけたぞ」
「本当に申し訳ない」
「…あの後お前とシーザーは崩れてきた岩に潰されかけた」
「ほう」
「んで、それを咄嗟に俺がお前らがギリギリ入れる程度に溶かした」
「…そりゃまたなんで」
「仕方ねえだろ。お前の体内にゃ波紋が流れてて潜り込めねえしあのままじゃお前らと潰れて心中なんてゾッとしねえ結果になっちまう」
「なるほど」
「お前の波紋に当たらねえようにしながら岩溶かすのは難儀したぜ…」
「肩でも揉もうか」
「うるせえ死ね」
じろりと睨まれてニナは少し距離を取る。しかし何もする気はないのかエシディシは話を続けた。
「で、ジョジョとリサリサがお前を見つけて。ナチスとやらにお前らを引き渡す一瞬波紋が途切れたんでな、例の小瓶に潜り込んだっつー訳だ」
「あれ?あそこに入るには君随分と大きくなってた気が…」
「誰かさんの我儘と波紋のせいでまたあそこに入れるまで小さくなっちまったよ」
「…本当なんと申し開きすればいいか…」
エシディシの視線に耐えきれずニナは顔を逸らした。
「でもじゃあ君はなんで私の頼みを聞いたんだ?」
「ああ?」
「あの時私は自力で動くことは出来なかった…君が手助けしてくれなかったら。それに流法を使えるほど回復してたのなら私をあの場で殺して食うことだって出来ただろう?」
「…おれの損な所と言うか、なんというか」
深々と、今までにない程深々と息を吐いてエシディシは顔を上げた。
「今度は時間はたっぷりあるようだな。長い話をしてやろう」
「…飽きないよう頼むよ」
ニナの言葉にエシディシはにやりと笑った。
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