小説 | ナノ






「頭いたーい」
「いきなりなんですか」
「頭が痛いんですようテレンスさん」
「気持ち悪い声出さないでください」
「ひどいっ!どこぞの帝王様は人が苦労して連れてきたスタンド使いガンガン使い捨ててくれるし、その執事は冷たいし…痛いわあ、心も頭も痛いわあ」
「脳味噌が痛んでるの間違いでしょう」
「ふふふーそういうこと言ってると苛めちゃいますよう」
「出来ると思ってるんですか」
「いぐざくとりー」
「…」

イラっとくる口調でそう言うこの女はだらけているように見えて隙がない。
そして、先程の質問に対する答えは躊躇なくYESだった。つまりこいつは本気で私より自分が強いと信じていて。そしてそれは、事実でもある訳だ。

「実に忌々しい」
「ふふふ、それは褒め言葉ですよう」
「…そんなに自信があるなら私の土俵に上がってこれますか?」

自分でも馬鹿らしいと思う挑発。しかし、自身のプライドが馬鹿にされっぱなしなのは許さなかった。

「嫌ですようそんなの」
「自信がありませんか」
「いいえー。だって、私が勝っても私に得はないじゃないですかあ。万が一私が負けたらテレンスさんは私の魂を手に入れますけどお」
「…その言い方だとあなたが勝てる可能性の方が高いようですね」
「高いんじゃなくて、私が勝つのは確定ですよう」
「…本気で言ってるんですか」

言葉なくにいっと口角を吊り上げた彼女から強く感じるYES。酷く腹立たしい。
「分かりました、ならば私が持っているもので貴女が欲しているものならばなんでも譲りましょう。…勿論貴女が勝ったらですが」
「いいんですかあ?」
「もちろん」
「…そうですか、なら」

彼女の纏う、空気が変わった。

「テレンスさん、あなたの魂を私にくださいね」

「…は?」
「ゲームは何にしますかあ?何でもいいですよう」

ほんの一瞬前の鋭さは成りを潜め、にこにこと笑う姿はいつもと同じ愚か者のそれだ。しかし、その下に潜んだあれは。

「さあ、互いの魂を賭けて、遊びましょう?」

あなたは私のですよう、と悪魔が笑った。



罠に嵌まった男
ああ、自分は早まった選択をしたのかもしれない


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