小説 | ナノ






「名前っ!」


普段とは違う切羽詰まった様なプロシュートの声に名前は振り返った。その視界に映ったのは、もう死んだと思っていた男のニタリとした笑いと、青褪めたプロシュートの顔。次の瞬間腹部に何かが突き刺さった様な衝撃が名前を襲った。自分の体を見降ろすとシャツが赤く染まり始めている。それを確認したと同時に足から力が抜けてへたり込んだ。毒か何か混じっていたのか。急速に擦れていく視界に男にトドメを刺して駆け寄ってくるプロシュートを捉えながら、名前の意識は途切れた。


任務から帰ってきたプロシュートの腕には意識を失っている名前が抱きかかえられていた。アジトに一人起きていたリゾットは名前の姿にも驚いたが、それ以上にいつも冷静なプロシュートの取り乱し様に人知れず目を見開く。


「リゾット、医者呼べ医者!」

「あ、ああ」


プロシュートの気迫に少々押されながらリゾットは電話をかける。呼び出し音を聞きながら名前とプロシュートを眺める。名前は出血こそしているものの、応急処置が良かったのかそこまで危険な様には見えない。むしろ彼女を抱きしめているプロシュートの方が今にも倒れてしまいそうだ。プロシュートもこの仕事について長い。彼女が死にはしない事は冷静になれば分かるだろうに。漸く電話に出た医者に往診を頼みながら、ジッと名前を心配そうに見つめるプロシュートに、思わず微笑みがこぼれた。


「直ぐに来るそうだ」

「そうか」

「名前をベッドに連れて行ってやれ」

「…ああ」


壊れ物でも扱う様に名前を運ぶプロシュートを見送りながら、リゾットは若いというのはいいことだな、なんて随分とじじ臭い事を考えてしまった。実際にはプロシュートとそう歳は変わらないのだが。

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