小説 | ナノ






「露伴先生ご飯出来ましたよー」
「ああ、丁度区切りも付いた」
「相変わらずお仕事速いですねぇ」
「ヒーヒー言いながら原稿やるなんて馬鹿みたいだろ」
「普通の先生方は締め切りに追われたりするみたいですけど」
「そんなのろまの奴らと同じにしないでほしいね」
「はぁ。…まあ前から対談とかでもそういう事仰ってましたもんね」
「ああ。…と言うか君そういうの読んでるんだな」
「…それはどういう意味でしょうかー」
「文字だけの物を読めるほど利口だとは思ってなかったよ」
「流石にそれほど馬鹿じゃありませんよ!」
「ふーん」
「全く…。大体変だとは思ったんですよね、そんな露伴先生がアシスタント募集するなんて。募集要項に"家事が出来る事"なんて書いてあったし」
「そういうおかしいと思いつつ進む所が間抜けみたいだということに君は気付くべきだな」
「うぅ。まあでも原稿が終わった後に露伴先生が原稿見たりしてくれてるし、お給料もらいながら勉強させてもらってるようなものですから後悔はしてませんよ!」
「ふん。ぼくに言わせりゃ君に漫画家としての才能はないがね」
「…それでも、漫画家になりたいんです。その為の努力なら惜しみませんよ」
「どうしてそんなに漫画家にこだわるかが分からないな。君じゃ苦労するのが目に見えてるよ」
「昔、同い年の漫画家が鮮烈デビューを果たしまして。それまではただお話を考えたり絵を描くだけで満足してたんですけどねー。…その人の漫画を読んで、私も自分の漫画で人をわくわくさせたいと思ったんですよ」
「ほう」
「まあ、同い年の漫画家って露伴先生の事なんですけども」
「分かってるよそんなこと。でも君じゃぼくの様にはなれないね、絶対」
「…またきっぱりと」
「君の荒唐無稽な話に着いてける読者はぼくくらいだろうよ」
「…へ?」
「それに君には漫画より料理の方が才能が有る」
「ろ、露伴センセー?」
「まあ君はこのままぼくのアシスタントとして飯を作りつつ好きなものを好きなように書いてるのが一番だろうさ」
「えーっと、それはどういうことでせうか」
「これだけ言って分からないのか。思っていた以上に低能だな」
「す、すいません?」
「ああ、こんなこと話してる間に飯が冷める。さっさと食べるぞ」
「え、え」

…どんどん早口で捲し立てた後さっさと逃げるのはズルいじゃないですか。
ああ、なんだか急に暑くなってきました。


遠回しな男
ずっとここに居ろという事でよろしいですか露伴先生



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