2013ホワイトデー | ナノ
※学パロ


「どうぞ」

「…え?」


いきなり肩を叩かれたかと思えば、後ろにはジョルノ君が立っていた。その手には可愛らしい包みが乗せられている。これが他の男の子だったら似合わないとも思うが、ジョルノ君だと似合うから不思議だ。そんなことを考えていると焦れたのかグイッと包みを押し付けられる。思わず受け取るとジョルノ君はさっさと踵を返そうとしていた。その裾を掴み押しとどめる。


「あの、これなに?」

「…今日はホワイトデーでしょう?」


呆れたように返してきたジョルノ君に驚いて手を離してしまう。すると彼はすたすたと立ち去ってしまった。その後姿を見送りながら脳みそをフル回転させる。…え?私バレンタインにジョルノ君にお菓子あげたっけ?
一か月前のことをゆっくりと思い返してみる。…うん。渡してない。渡してないよジョルノ君!
どう考えてもホワイトデーにお返しを貰うようなことはしていない。普段持っているチョコなんかを強請られてあげたことはあるが、バレンタインは何もあげてない。だって沢山貰うから糖分には事欠かなかったろうし。
まあ、つまりこの手に置かれている包みは私のものではなく、ほかの誰かに渡すはずのものであろう。登校中重そうな紙袋を持っていたし、渡す人が多すぎて渡し間違えたとか?いや、でも彼がそんなミスをするものだろうか?ならこれはいつもあげてるお菓子の御礼だったりするのか。ついでに渡しとくか、的な。
うんうん、と唸りながら考えるも渡してきた本人はもう居ないし、何より可愛らしい包みには人気の洋菓子店の刻印がある。その誘惑は抗いがたいもので。


「…も、もらったもの食べないのも悪いしね?」


自分自身に言い訳しつつ包みをほどく。もし渡し間違いだったら本来の受け取り主には悪いが…。そんな思いも美味しそうなお菓子の外観に打ち消されたのだった。



「っていうことがあってとても美味しかったです」


昼休み。屋上でトリッシュとスージーQ先輩とお弁当をつつきながら朝の一件について話す。ちなみにトリッシュとは中学の時からの親友で、スージーQ先輩とは料理クラブで知り合った。二人とも私の大切な友人である。


「へえ、なんだったのかしらねえ」


ほわほわと花を飛ばすスージーQ先輩は可愛らしい。彼氏であるジョセフ先輩が妬ましくなるくらいだ。それに対しトリッシュは何か考え込んでいた。


「どうしたのトリッシュ?」

「いや、私もジョルノからお返し貰ったけど…お店が違うのよね」

「え、トリッシュのだけ違うとか!」

「恋かしら!」


スージーQ先輩と手を取り合って叫べばトリッシュが顔をしかめる。


「んな訳ないでしょ。…わ、私が好きな人居るのあいつ知ってるし…」


徐々に小さくなっていく語尾が可愛らしい。赤くなったトリッシュの両脇に詰め寄る。


「そうそう、ブチャラティ先輩からのお返しは?」

「ブチャラティ君センス良さそうよねー」

「ほ、放課後に会おうってメール来たわ…」


今度こそ甲高い悲鳴を上げてスージーQ先輩と手を取り合う。これは親友の恋が叶うということなのかしら!自分の事ではないがにやにやしていると、小気味のいい音を立てて頭を叩かれた。


「私の事はいいのよ!それより、多分ジョルノが名前に渡した奴の方が特別なのよ」

「え?」

「だって、私の貰ったやつ他の子に渡してたのと同じだったもの」

「あら、じゃあ名前が特別なのかしら」

「え、それはないですよー」


ひらひらと手を振りながら軽く否定しておく。だってあのジョルノ君が私になんて、ねえ?多分何種類か買って余ったのがあれだったのだ。もしくは違う人の所に行くはずだったのだろうが…。特別なものを渡し間違えることはないだろうし、そういうことなのだ絶対。

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