「おはよー」
「…なんだこの騒ぎは」
「ホワイトデーに託けたお茶会」
ますます不思議そうに首を傾げるDIOを眺めつつ手に持っていた紅茶を一口飲む。その視界の端にラバーソールがこっそり部屋の隅に逃げるのが見えた。
「ホワイトデーとはなんだ?」
「先月のバレンタインデーのお返しをする日だよ」
「…そんなものがあるのか」
「日本特有だけどねえ」
飲む?とカップを掲げると素気無く断られてしまった。美味しいのにな、と少々残念に思いつつデーボさん特製のクッキーを齧る。…相変わらず美味しい。
今度作り方とか聞いてみようかと考えつつもう一枚と手を伸ばす横でDIOがラバーソールを捕まえていた。
「…私は何も聞いてないが」
「痛い!痛いですって!てかなんで俺が発端だって決めつけるんです!?」
「間違ってませんけどね」
「なんでそれ言うの!?」
頭を掴まれたラバーソールが悶絶する中テレンスさんがサラッと売った。所謂人身御供と言う奴だろうか。
ダン君やホル・ホースさんたちと一緒に手を合わせて合掌。視界の端にそんな私たちを捉えたのか、青褪めた顔に引き攣った笑いが浮かんだ。…頑張れラバーソール!!!
「…名前」
「んー?」
一頻り痛めつけて満足したのか手を離したDIOがつかつかと近づいてくる。
「何が欲しい」
「いや、別に何もいらない」
即答するとDIOがぴしりと固まった。…だって、ねえ?
お菓子は見てのとおり事足りてるし、なにかこれと言って欲しいものも浮かばないのだから仕方ない。むしろこうして貰えると思ってなかったお返しをこんなに頂けただけで十分である。
「それより、これたべ、って、うお!?」
クッキーを差し出そうとした瞬間体が浮いて思わず変な悲鳴が出た。
「…女としてその悲鳴の上げ方はどうなんだ」
「君がいきなり担ぎ上げるからいけないんじゃないか…」
俵を抱えるように肩に乗せたDIOが歩き出す。普段抱きかかえられている格好より不安定な気がしてぎゅっと服を握れば皺が寄った。
ひらひらと手を振る皆に苦笑いをしつつ手を振り返す。さて、このご機嫌斜めな帝王をどう扱うか、部屋に着くまでに考えなければなるまい。
ばれない様にこっそりため息をつきつつ、久しぶりに感じる低めの体温に思わず笑みが浮かんだ。
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