「…綺麗ね」
「ああ」
「これ、あの時のね」
最後に会った時、プロシュートがくれたのもこれだった。綺麗な飴玉の詰まった小さな瓶。辛いときはそれを見て、一粒だけ口に含んで寝たものだ。なんだか元気が出るような気がして。
「あの瓶、まだ取ってあるのよ」
「…そうか」
プロシュートが柔らかく微笑む。それにしても…。
「今のあなたに飴玉って似合わないわね」
「うるせえよ。…ジョルノがな、飴がいいっていうから」
「ボスが?」
「ああ。ジャポネじゃホワイトデーのお返しとやらには意味があるんだと」
「へえ…どんな意味なの?」
「あなたが、好きです。だ」
…ジョルノがにやにやしていた理由がなんとなく分かった。随分と勘のいいことだと思っていたらタネはこういうことだったのか。
「おい」
「はい?」
「返事は?」
「…そうね。私もあなたが好きよ、プロシュート」
ニコリと微笑みながら言えばムッとした顔をする。
「随分と余裕だな」
「そりゃあこういう仕事が長いもの。照れ隠し位簡単よ?」
「ほう。…じゃあ、その化けの皮剥がしてやろうか?」
「化けの皮って失礼ね」
腰に回った手に手を重ねながら口を尖らせる。頬を撫でる手に目を閉じれば柔らかな感触が唇に触れた。そっと目を開ければ優しい顔をしたプロシュートが映る。
「あの日からずっとこうしたかった、って言ったら笑うか?」
「…笑わないわ」
私だって、ずっと待ってたもの。その言葉を皮切りにシーツに二人倒れこむ。
体に触れる手に、私を見つめる瞳に、呼ばれた名前に。涙がこぼれたのは、仕方のないことだと誰かが頭の中で笑った。
ふう、っとプロシュートが吐き出した煙を目で追いながら瓶の蓋を開ける。一つ取り出した飴玉を口に入れると懐かしい味が広がった。
「ありがとう、プロシュート」
「あ?」
「なによりも嬉しいプレゼントだわ」
瓶を振った私にプロシュートがキスをする。
「甘いな」
「プロシュートの方は苦いけどね」
くすくすと笑い合いながら、手を絡ませて。皺だらけになったシーツの中また体を寄せ合った。
純白のシーツに沈む
次の日、荷物を纏めた私は長年の巣に別れを告げた。
(もう帰ってくることは無いわ!)
4/4