「久しぶりねメローネ!」
「うん、皆にディ・モルート会いたかったよ!」
「ギアッチョは相変わらず仏頂面してるー」
「う、うるせえよ!」
若い反応に周りの子が楽しげに笑う。それを眺めながらグラスの中身を空けた。
「あの子たちも人気者になったものね」
「見た目はいいですからねえ」
「…さらっと毒づくのね」
「持ち味ですから」
くすくすと二人で笑い合っていると数人が人の輪から外れてこちらに来た。
「久しぶりだな」
「ええ、久しぶりね」
リゾット、ホルマジオ、プロシュートの順にハグと挨拶のキスを送る。この三人とはまだ彼らが暗殺チームなんて物騒なチームに入る前から交流があった。といってもチームに入ってからはほぼ顔を合わせることもなかったが。こうしてゆっくりと話せるようになったのはボスがジョルノになってからである。
「カリーナならもうすぐ来るわよ。エルダは買い物に行ったから少し時間がかかるかも知れないわね」
ニコリと微笑みながらそう告げればリゾットとホルマジオが照れたような何とも言えない顔になった。贔屓の女の子を把握されているとは思わなかったのだろうか。
「…よく知っているな」
「そりゃあね」
悪戯っぽく笑えば渋い顔になる二人にますます笑いが湧き上がってくる。
「さて、ボクはそろそろ向こうにも顔を出しますかね」
「ええ。またお話ししましょうねボス」
「はい。…よければ待っている間一杯奢りますよ」
「お、いいねー」
「ありがとうございます」
「こんな所で畏まらないでください」
空いたテーブルに移動する三人を見送ってから一人残った男に目を向ける。
「あなたは行かなくていいのかしら?プロシュート」
「ああ。オレのお目当てはここに居るんでね」
ニヒルに笑う姿は綺麗な顔と相まって酷く魅力的だ。そこらの女の子なら、イチコロだろうな、なんて考える。
座ったプロシュートに酒を出してバーテンが下がった。空気とやらを呼んだのだろう。
「…こうして二人で飲むのも久しぶりだな」
「そうね」
プロシュートと出会ったのは十数年前。私はまだここに来たばかりで、プロシュートはチンピラ同然だった。偶然会ったしこたま酔った幹部に連れてこられた彼は、不機嫌そうな振りをしながら緊張が隠しきれてなかったのを覚えている。
「初めて会ったころは可愛かったわねあなた」
「それはお前も同じだろう?」
…まあ、確かにそうだったかもしれない。父を亡くした母が私を連れてここで働き出した頃。私は店の女として働くには幼く、給仕の真似事をしていた。初めて見る夜の世界、女の顔をした母。目に映るすべてが恐ろしくて、悍ましく感じていた。あの頃の私は、ただただ怯えていた。
「今じゃ、遠い過去ね」
「まあな」
プロシュートの手の中でカラン、と氷の鳴る音がした。
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