2013ホワイトデー | ナノ
「運命って不思議だね」

「え?」

「もしも、ディオが居なかったらジョセフは生まれてなくて、ホリィも承太郎もいなかったかもしれない。でも、実際には彼がいたから皆が居て、こうして名前ともお茶が出来る」


不思議だとは思わないかい?彼の言葉に頷いて私も紅茶に口をつける。
…確かに、運命とは不思議なものだ。次元すら異なる世界から記憶を持って転生したかと思えば、その世界のラスボスともいえる存在と出会い、今じゃ主人公たちと家族として過ごして、遂にはそのご先祖様の幽霊とお茶しているのだから。


「全く、不思議極まりませんね」

「ね」


二人顔を合わせてくすくすと笑う。まるで子供たちの内緒話の様だ。


「さて、たまには外に行きませんか?」

「え?」

「梅の花、見に行きましょう?」


立ち上がって手を差し出せば、苦笑される。


「全く、君には驚かされるなあ。今日は寝巻じゃないと思ったら…」

「始めに驚かされたのは私ですよ。それに嫌ならお連れしませんが?」


悪戯っぽく微笑めば慌てて手が掴まれる。本当に可愛らしい人だこと。



「…可愛らしい花だね」

「そうですねえ」


あまり遠出は出来ないので近くの公園になってしまったが、電燈で照らし出された梅はジョナサンさんのお気に召したらしい。嬉しそうにしているのを近くのベンチに座って眺める。


「そういえば桜切る馬鹿梅切らぬ馬鹿、という言葉がありますね」

「へえ、どういう意味なんだい?」

「桜は育つがままに任せて咲き誇らせるのが美しく、梅は剪定してこそ美しいことからそういわれるようになったとか。まあ、言葉のままですね」

「なるほど…確かに桜はそのままが一番綺麗だものね」


ジョナサンさんが少し遠くを見る。その視線の先には桜があるが、蕾が付き始めたもののまだまだ寒々しい様相を呈していた。


「桜が咲くころにまた来ましょうか」

「いいのかい?」

「ええ。お連れしますよ」


嬉しそうに笑ったジョナサンさんがあ、と小さくつぶやいた。


「まいったなあ。お返しに来たのにボクの方が素敵な約束を貰っちゃったや」

「お返し?」

「うん。ええっと、どこだったかな…」


頬を掻いたジョナサンさんがごそごそとポケットを漁りだす。何がしたいか分からないが私はただ待つのがいいのだろう。そう思い静観に徹した。

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