※学パロ
教室を出て下駄箱に向かう。どこかざわついた廊下を歩いていると後ろからパタパタと駆ける足音がした。だらしなく靴底を引き摺るその独特の足音に小さく笑ってしまう。
「シーザー!」
思った通りの人物の声に、さも今気づきましたとばかりに振り返る。
「ん?ああ、名前か」
「一人?」
「ああ。ジョジョの奴スージーQとイチャついててな」
「まあ、バレンタインですし?カップルの邪魔はしちゃいけませんよお兄さん」
「馬に蹴られるのもごめんだしな」
二人で顔を見合わせてくすくすと笑う。名前と仲良くなったのは、親友であるジョジョの彼女、スージーQと名前が幼馴染だったからだ。初めは周りにいる女子と同じように丁寧に接していたが、今では男友達とあまり変わらない様に扱ってしまう。
さばさばとした性格、よく回る口、活発な行動、それらは今まで周りにいた女子とは違い驚くほど気軽に付き合えた。
「一人身同士お茶でもしてくか」
「いいけど…でもシーザーとだったら一緒に帰りたい女の子多いんじゃない?」
ちらりとオレが手に持っていた紙袋に目をやると悪戯っぽく名前は笑う。それに小さく肩を竦めて返した。
「一人の女の子に決めるなんてできなくてね。他の子を泣かせてしまうだろう?」
「うっわ、刺される男の常套句だわ」
ケラケラと笑う名前の頭を軽く叩いた。
「いたっ!暴力はんたーい」
「お前が縁起でもないこと言うからだろ」
「本当のことじゃん」
「もう一発欲しいか?」
「要らないよ!てか女の子に手を挙げるとかさいてー」
「ふむ…どこに女の子がいるか教えてもらってもいいか?」
無言で蹴ってくるのを交わしながら下駄箱に辿り着く。ぐしゃぐしゃと髪を引っ掻き回されていた名前の足が止まった。それに倣い足を止め、名前の見ている方向に目をやれば何とも言えない顔をした女の子が立っていた。
「…あー、シーザーごめん!私教室に忘れ物してきた!」
「は?」
止める間もなく駆けだした名前を呆然と見送る。そんなオレの背中に、か細げな声がかけられた。
「あの…シーザー君、今…時間あるかな?」
その言葉に苦々しく思いながらも笑顔を取り繕って頷いたのだった。
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