Wonderful Days | ナノ






学校から帰ってきてお母さんに挨拶をするとそのまま部屋へと駆け上がる。途中承太郎が廊下を走るなとか学校の先生のような小言を零していたがスルーした。
部屋に入って制服を脱ぎ捨て、楽な部屋着に着替えてテレビの前に座る。


「さて、今日でクリア出来るかな…?」


ゲーム機本体の横に放り出されていたコントローラーを持ち鼻歌を歌う。最近発売したばかりのゲームはもう、本当にツボだった。選択肢によって変わるスタンスと難易度の高いダンジョン。荒廃した雰囲気も冒険心を刺激する。
…ぶっちゃけこっちに来る前にもチャレンジしたけど難しすぎて挫折したんだよなあ。今ならできるということはただ単に昔は下手くそだったというだけなんだろうけど。これも偏にゲーマーな執事と友人との付き合いで育まれたスキルだろう。
一人頷きながら違和感を覚える。普段ならもう流れているはずの音楽が流れていないのだ。画面を見ると真っ暗のまま動く気配はない。


「フリーズかな?」


一度カセットを抜こうと近づいた瞬間画面が光り、凄まじい速度で文章が羅列されていく。…え?ただのフリーズじゃなくてバグとか?
一瞬こういった状況での怖い話が浮かんできてゾッとしたが、それ以上に今までのデータが消えるかもしれないという方が怖かった。
数秒悩んでリセットを押そうとした、その時。


「さあ、世界の再構築だ」


どこかで聞いたような、初めて聞くような不思議な声に顔を上げた瞬間。眩い光に視界を奪われた。反射的に固く目を瞑ると貧血を起こした時の様な不快な浮遊感を感じて、私は意識を失った。

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