Wonderful Days | ナノ






少しばかり重たくなったような空気に戸惑っていると、ジョナサンさんが大きく手を打ち鳴らす。

「えっと、とにかく!折角の再会みたいだし…どうです?お夕飯でも食べていきませんか?」
「…ご相伴にあずかっても?」
「ええ!実はもう色々と用意してあるんですが…ちょっと多くなりすぎちゃって」
「ではお言葉に甘えて」

営業スマイルを浮かべたディアボロに部屋の空気が少し軽くなった。仗助が安堵したとばかりに大きなため息を一つ。

それからはDIOとディアボロのなんともいえない腹の探り合いやら、口喧嘩の様な騒がしい喧騒の仲なんとか和気藹々、と言えるような雰囲気になった。正直ほぼジョナサンさんのおかげである。あの人マジ天使。

「では私はこれで」
「あ!私そこまで送るよ!」
「もう暗いしいいぞ」
「いいのいいの!そこの通りまでだから!行ってきまーす」
「気を付けてね」
「帰りにコーラ買ってきてちょーだい!」
「はーい!他の皆は?」
「んじゃオレはジンジャエール」
「ボクは大丈夫だよ」
「俺もいい」
「私も要らん。ジョルノも要らないな?」
「ええ、お気をつけて」

皆に手を振りつつ、こちらも見ずにぶっきらぼうな雰囲気を醸していた承太郎に少しさびしくなる。何がいけなかったのかなあ。

暗い夜道をディアボロと二人手を繋いで歩く。なんだか子供の頃に戻ったみたいだ。

「ナマエ」
「んー?」
「あの承太郎、という奴だが」
「承太郎がどうかした?」
「拗ねていたぞ」
「え?」

承太郎が拗ねてた?あの冷静沈着が売りの承太郎が?…そりゃ今まで一度もそう言うところを見たことがないわけじゃない。でも、そう言う時の承太郎は案外わかりやすくて、言ってしまえば構えよ、的なオーラがある。だけど今日のあれは、なんというか…拒絶、されているような気がしなくもない。

「他の二人…ジョナサンとジョセフ、だったか。彼らも同じような蟠りがあったようだが…性格と言うかそれなりに大人、と言った所か」
「えっと…話が見えないんだけど」
「…鈍いな」

呆れた様にため息をつくディアボロにイラっとする。脛を蹴ろうと足を振れば易々とさけられた。更にムカつく。

「…お前が私をお兄ちゃん、と呼んだからだろう」
「え?」
「もうお前があの家に引き取られてから八年だ。私と一緒に居た頃よりも長い。それなのに自分の事は兄と呼ばずに私をそう呼ぶ。それにお前の事だ、どうせ遠慮ぶって迷惑をかけまいとでもしてたんだろう」
「…あれ、反論できるところがない気がする」
「気がするんじゃなくて実際に出来ないんだろう」
「…うーん」

この世界が、どこまで今までの世界とリンクしているのか、私には分からない。でもきっと、やっぱり私が私として認識されている以上、彼らの中の私はそう差異の無いものなのだ。だとしたら、やはり。

「遠慮、してるのかなあ」

遠慮ではなく、いい子でありたいという子供じみた願望、なのだろうけれど。

「だろうな。…お前は家族が欲しかったんだろう?」
「…うん」
「…いい家族に恵まれた、と思うなら甘えてやれ。それも恩返しみたいなものだ」
「…そうなんだろうけど、君にそういう正論言われるとこう…イラっとする」
「失礼だな。…ここまででいい」

いつの間にか大きな通りまで来ていた。繋いでいた手を放すと、ひやりと冷たく感じる。名残惜しい気持ちになりながら揺れる独特な髪を見上げて。

「うん。…ディアボロ」
「なんだ?」
「承太郎は…ジョナサンさんもジョセフさんも、仗助もみんな大切な兄弟に思えると思う」
「ああ」
「でもやっぱり、私がお兄ちゃん、って呼ぶのは君だけなんだよ」
「…相変わらず強情な奴だな」
「うっさい。…でも、皆に笑ってて欲しいからさ、頑張るよ」

くしゃり、と私の頭を撫でて、ディアボロは薄く笑った。挨拶代りのキスを一つ落として歩いていく後姿を眺める。怯えることなく歩くその姿に、やっぱり幸せだな、なんて間抜けな感想が頭を過った。



こうして新たな日々が始まっていく
この幸せを失いたくないなんて、すでに骨抜きもいい所

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