Wonderful Days | ナノ






涙を拭いながらDIOを見れば、困っているのと照れているのとの中間の様な顔をしていた。それに思わず笑っていると、こちらを見上げている少年…ジョルノと目が合う。ジョルノが私を見上げて微笑ましい、と言った表情をするものだからなんだかとても恥ずかしくなってしまった。…うわあ、なんてみっともない所を見せてしまったんだろう。顔が赤くなっていくのを感じていると、下から声が聞こえた。

「DIO!DIOじゃないか!ジョルノも!大きくなったねえ!」
「あ、ああ…久しぶりだなジョナサン」
「ジョナサンさんお久しぶりです…名前さんも」

ジョナサンさんとジョルノは面識があるのか、と思っていると再度ジョルノがこちらを見上げてきた。…どうやら、私とも面識があったらしい。

「とにかく二人とも上がってよ!名前も降りておいで」
「はーい!」

ジョナサンさんに元気良く返事をして、寝っ転がっていたせいでぼさぼさになった髪を手早く直す。一応姿見で変な所がないか確認してから部屋を出た。

居間に行くと、なんとも形容し難い空気が漂っていた。
にこにこと笑うジョナサンさんと、少々険悪な空気を醸し出しているジョセフさんと承太郎。そんな二人に気圧されている仗助の横でジョルノがすまし顔で紅茶を飲んでいた。そして、DIOがふてぶてしい顔で笑っている。

「…ふん、多少は成長したようだな名前」
「…褒め言葉をどーも」

彼と…この世界の、DIOとの関係がまだ分からないから下手なことは言えない。だけれど。DIOがこうして日の光が入る部屋で、ジョナサンさんやジョルノ達に囲まれて悠々と笑っている、それだけで泣けるくらい幸せな気持ちになれるのだから現金なものだ。

「随分早くこっちに来たんだね」
「ああ、準備も必要だしな。…少々厄介なことにもなっている」
「え?どういうことだい?」
「お前に言っても仕方ないだろう?こっちには関わらないんだからな」
「…相変わらず手厳しいなあ」

ジョナサンさんに素っ気なく言い返すDIO。ジョナサンさんはそれでも朗らかに笑っているし、DIOもなんだかんだ言って楽しそうである。

「つーかよ!なんでDIOまで日本に居んだよ!」
「っていうかこの人誰なんすか?」

不機嫌そうにDIOを指差したのはジョセフさん。それに対してDIOは一つ鼻を鳴らしただけだった。どうやら説明する気は毛頭ないらしい。

「ああ、それがね…父さんがこっちにも支社を作るらしくて。そこの取締役としてDIOがこっちに来たんだよ」
「ふん…ジョージのアホが跡取りと言うのはなんだが…まあ今のところは甘んじてやろう。成果を出せばジョースター卿も私を認めざる得ないだろうからな」
「んだとテメー!」
「キャンキャン吠えるなうっとおしい」
「DIO!そんな言い方ないだろう!」

DIOを窘めるジョナサンさん、無視するDIO、さらに頭に血が昇ったらしいジョセフさん。…うわあ、何とも言えない構図だなあ。
とりあえず手つかずだった紅茶を一口啜る。勝手に鎮火するまで待とうかな、と思っていたら勇敢にも仗助が口を開いた。

「だーかーら!誰なんすかこの二人は!」

叫んだ仗助に三人が止まる。ジョナサンさんが何度か瞬きをしてから、ごめん、と困ったように笑った。

「DIOはね、僕らの義兄弟なんだ。戸籍は弄ってないから姓はブランドーのままだけど」
「ふむ…そう考えるとジョセフ。お前随分と兄に失礼な口をきいているな」
「オレはお前が兄貴だなんて認めてねーっつーの!」
「ほら!喧嘩しない!」

また混ぜっ返し始める二人を叱りつつジョナサンさんが説明を再開する。…何度も二人が言い合いを始めるのでだらだらとした説明になってしまっていたが。
とりあえず、子供の頃ジョースター家に引き取られたDIOは成績優秀で法学部に進んだ。誰もがそのまま検事か裁判官かにでもなるかと思っていたが、DIOは養父であるジョースター卿の仕事を手伝うことに。そしてこの度子供たちが日本に住むのに伴って、日本支社を作ることに決めたジョースター卿がそのトップにDIOを据えた、とのことである。

「はあ…DIOさんのことは分かりましたけど。…こいつは?」
「こいつじゃなくてジョルノです。ジョルノ・ジョバーナ」
「…ああ、えっと。ジョルノ?は苗字も違うみてえだし、どういう関係なんすか」
「ジョルノは私の異父弟だ。父と離婚した後母がイタリア人と再婚してな」
「家があまり裕福ではなかったもので。学校に通うのに兄さんを頼ったんです」
「イギリスに置いてきても良かったのだが…将来的には私の右腕になってもらうつもりだからな、連れてきた」
「右腕云々は知ったこっちゃないですが…まあ、日本食が好きなので」
「…そ、そんな理由で来たの?」
「ええ、それにあなた…名前さんも居ますし」
「へ?」
「…なんて、冗談ですよ」

軽く笑って肩を竦めるジョルノ。…ああ、イタリア人の血がしっかり入ってるってことですか。
隣で殺気立つ承太郎の腕を抑えつつ曖昧に笑い返しておく。こんな年下にそんないきり立たなくてもいいでしょうよ…。

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