神隠しの少女 | ナノ






「…お邪魔しました」

「おい、茉莉香!」


DIOが私の名を呼んだが、気にもせずに扉を開けて外に出る。ひやりとした空気に一度深呼吸をした。

事の始まりは数十秒前。テストやらなんやらで最近DIOの所に遊びに来ていなかった私は漸くできた時間でここに来た。そして見たものはDIOと、…綺麗なお姉さんとのベッドシーンだったわけだ。


「節操なしめ…」


一人文句を言いながら廊下を歩く。元々そう言う女性がいるのは知っていた。だってあの人とりあえず息子四人もいますし。なんならもっと居ても不思議じゃありませんし。
それでも、私の目に着かない様に最低限の配慮はしていたし、気にしたことは無かった。DIOも暫くこれない、と私が言ったせいで気が緩んでいたんだろうし責める必要はない。というか別に恋人でもないのに責める権利などない。…それは分かっているのだが。


「なんかイラっとするなあ」

「なにが?」


後ろから聞こえてきた声に振り向くとマライアさんが立っていた。


「お久しぶりです」

「久しぶりね、で、どうしたの?」


ニコリと微笑むマライアさんは相変わらず美人だ。その笑顔に癒されつつ事のあらましを説明する。


「ふーん…つまり嫉妬してるわけね?」

「嫉妬って…そんなんじゃないですよ」


思いもよらない言葉につい吹き出してしまう。私が嫉妬?まさかそんな。


「だってDIO様とその女の子と見てイラっとしたわけでしょう?」

「そうですけど…多分あれですよ。私が忙しかったのにこいつ遊んでやがる…みたいな苛立ちですよ」

「そうかしら?」

「そうですって。忙しいときじゃなかったらあんなの」


忙しくない時だったら、あれを見ても笑って流せた?そんな仮定であのシーンを脳内で再現する。…あれ?


「イラっと、する?」


私の言葉にマライアさんがくすくすと笑った。


「茉莉香は恋ってしたことないの?」

「恋、ですか…?」


…こちらに来る前はそれなりにあった。でもこちらではとんと縁がなかった言葉だ。だって基本関わる人皆可愛いっていう意識があったからね!キュンとすることはあってもそういう目で見たことは無かったと思う。
唸る私の背を押してマライアさんが歩き出す。


「えっと、どこへ行くんでせうか」

「ふふ、こういう話は二人でするのはもったいないわ」


そうして私はマライアさんに拉致られた。

[ 1/2 ]

[*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]