神隠しの少女 | ナノ






次にダンが目にしたのは木立ちと少し離れた所にあるチケット売り場だった。どうやらここは入り口から少し離れた一目の着かない茂みらしい。

「おい」
「はい?」
「ターゲットはまだこんなとこに居るのか」
「いや、もう中じゃないかなあ」

茉莉香の言葉に頭に血が上るのが分かる。

「…じゃあなんでこんなところに来たんだ」
「だってチケット買わなきゃ」

その言葉にダンは目眩がした気がした。真面目か。真面目なのか?殺したらさっさと出るのだからチケットなんていらないだろう!

「ダン君のスタンドって良く知らないけどあんまり力は強くないんでしょ?」
「…ああ」
「ならやるまでに時間かかるかなって」
「それでも一時間やそこらだ…!」

肉の芽など直接的な武器がない為少々時間はかかるが、脳に瘤を作って破裂させるとしても小一時間程度だというのに何を考えているのか。

「一時間あったらなんか乗れるし、第一チケットぶら下げてないと目立つよ?」

…確かに茉莉香の言う通り柵の向こうの人間達は何か首から下げている。あれがチケットなのだろうか。こんな場所に来たのはもう何年前か。ダンには思いだせなかったが、茉莉香の言う通り目立つ、かもしれない。
経費で落ちるのだろうか、と悩みながら一歩踏み出したダンに茉莉香が何か差し出す。

「…これは?」
「DIOからお小遣い貰って来たからこれでよろしく」

にやりと笑う茉莉香をダンは初めて褒めてやりたいと思った。

入場すると近寄ってくるマスコットを避けつつまた人目のない所に移動する。時間的にレストランなどには入っていないだろうと結論付けて、さっさとターゲットの所へ移動することにした。

移動した先は思った通り人が多く、急に人が現れても誰も気にもせずに浮かれ呆けていた。注意深く周りを見渡すと、子供連れのターゲットを見つける。その無警戒ぶりにダンは少々呆れた。普段はSPまで着けているくせに随分と呑気な事だ。ここまで人が多ければ大っぴらに襲われる事はないとでも考えているのだろうか。
随分と簡単な仕事だと思いながらラバーズを送り出す。無事に到達したのを見てダンは小さく息をついた。

「で、どうする?」
「んー、あっちが楽しそうかな」

ターゲットの行く方向とは真逆を指差す茉莉香に文句も言わずに着いて行く。この遊園地内ならばどれだけ離れていても問題はない。

「合流するの?」

茉莉香の問いかけに頷く。相変わらず年に比べて敏いガキだな、とダンは感心した。
ラバーズはこれから脳幹の血管に瘤を作り、破裂させる。大概はそれで終わりだが、時にあと一押しが必要な時もある。それは、ダン自身が見て判断した方が確実だった。

「じゃあ、やっぱり一つか二つかなー」

少し不満そうに口を尖らせる茉莉香の横をダンは何も言わず気だるそうに歩くだけだ。

そして、予想以上に混んでいたのか、結局一つしか乗れなかった茉莉香は不服そうにしていた。

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