「ここがお前の部屋だ。おれは隣、かあさんは台所の横の和室だ」
「あ、ありがとうございます」
無言のまま進む承太郎に連れてかれた部屋はフローリングの床にベッドや机などが用意してあった。うーん至れり尽くせりで肩身が狭い。
「…なあ」
「はい?」
部屋を見まわしていると声を掛けられたので振り返れば、承太郎と視線がかち合う。思わず姿勢を正してしまった。ジッと見つめられて数秒。なんだか呼吸をするのも憚られる気がした。
「さっきはかあさんが悪かったな」
「あ…。いえ、ホリィさんの仰ってた事も当然だと思いますし…」
ただ、私が一方的に気まずいだけだ。想像上とは言え一度は見捨てようとした負い目に勝手に苛まれているだけ。
「そうか。まあ、早く慣れるといいな」
「はい。ありがとうございます」
やっぱり言葉遣いと言うか、イントネーションが柔らかくて不思議な気分になる。中学に入る頃は優等生っぽかったからその名残だろうか。というか可愛らしい坊ちゃんが何故あんな不良チックになったのか謎すぎる。反抗期激しすぎるだろ。
内心首を捻っていると、出ていこうとした承太郎がこちらを向いた。
「ああ、そうだ」
「?」
「おれのことは承太郎でいい。さんづけされるのは好きじゃない」
「はあ…」
「…ちっ、これじゃかあさんのこと言えねぇな」
そう言って今度こそ出ていった承太郎が消えても私は扉から目が離せなかった。
…あれは、承太郎なりの気遣いとかそういうものなのだろうかやっぱり。一瞬見えた耳が赤く色づいていたのがリフレインして、私の頬も赤くなった。
恥じらう美少年って破壊力あり過ぎだろうが…!
じたばたと暴れたくなる衝動を抑えるためにベッドに飛び込むと、お日様の匂いがしてホッとした。
空条家は優しい人ばかりです。
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