神隠しの少女 | ナノ






「と、いうわけで明日日本に立ちます」
「急過ぎるだろう…」

深深とため息をつくディアボロを見て私も大きく頷いておく。そうだよね、普通そうなるよね。

「…本当に決めたんだな」
「うん」
「そうか…」
「寂しい?寂しい?」

俯いた顔を覗き込みながら聞けば頭を叩かれる。DIOといいディアボロといい私の脳細胞殺すのに余念がないなちくしょう!

「黙れアホ」
「馬鹿より傷つくのは何故かしら…」
「知るか」
「冷たいなあ…」

そっぽを向くディアボロにべたりとくっつく。引っぺがされるかと思いきや、そのままの体勢で数秒。やっぱり寂しいんじゃん、と茶化したい気持ちもあったが、今はさすがに自重した。

「…お前は寂しくないのか」
「寂しいよ?」
「そうは見えないけどな」
「うーん…。まあお隣ではなくなるけど、会いたくなったら会いにくる予定だし」
「お前イタリアと日本がどれだけ離れてるか知らないのか?」
「いや、スタンド使って会いに来ますし」
「は?」
「え」

…あれ、ぬいぐるみ移動させただけで人間も移動させられるの教えなかったっけ?でもあの男が出てくるとこみてたよね君。

「…スタンドって言うのはそんなこともできるのか」
「いやまあ、人それぞれ全く違う能力だから何とも言えないけど。とりあえず私は出来ます」
「ふーん…。もし、俺がこの島から居なくなっても大丈夫なのか」

そう言うディアボロの目はどこか暗いものを潜ませていて。…きっと彼は自分がいつかこの島を出ていく事を知っている。床下の秘密を誰にもばれずに、ここで一生を過ごすなんて考えは微塵もないんだろう。
…その秘密を共有できなかったのが少し、悲しい。例え生みの母親を半死半生で生かしてるとしても私は君を嫌いになったりしないのになぁ。
万が一そのことを私が知ったらディアボロはどうしただろう。私も一緒に殺したんだろうか?なんて有り得もしない想像をしてしまう。

だって、今の質問はきっとこの島を出てからでも会いたいという意味だと思うから。そう思えるのは、隠しきれない不安が瞳の中に渦巻いているから。

「もちろん。世界の何処に居たって戻ってくるよ…ディアボロ」

お兄ちゃんではなく、名前で呼んだのは初めてだった。ディアボロは小さく目を見開いてから小さく笑う。彼はどんな意味を感じ取ったんだろうか。
私としては、この島を出て"優しいお兄ちゃん"でなくとも受け止めるという意味を込めてみたんだけど。100分の1でも伝わっていればそれでいい。

「…無茶するなよ」
「それは約束できないなー」
「心配ばかりかけるな」
「はげる?」
「禿げるか!」

うん、禿げる代わりにカビるんだよね知ってる。

「ちゃんと会いに来いよ」
「任せといて!」

胸を叩く私の頭を乱暴になでる手を受け止めながら、やっぱり寂しいなぁと独りごちた。

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