神隠しの少女 | ナノ






至近距離にあるDIOの瞳が揺れる。それが動揺なのか怒りなのか、はたまた別の何かなのかは私には分からなかった。

「私の伯父さんのお舅さんだってさ。近いか遠いかよくわからない関係だよね」

何も言わないDIOの髪を梳くように撫でる。サラサラと指から零れる髪に痛みは見えなくてなんか悔しい。

「…私を、引き取りたいって伯父さんが」
「それで、お前はどうするんだ」
「…どうしたらいいんだろうね」

へらり、となんとも間の抜けた顔で笑う私がDIOの目に映る。本当に情けない顔してるなぁ。

「空条家の一員になるってことはさ、ジョセフさんと、その娘さんとかお孫さんとも関わるってことじゃない。それはつまりジョースターの血筋と関わるわけですよ」
「そうだな」
「ジョースターはDIOにとって敵なんでしょう」
「ああ」
「なら、私はあの人たちを拒絶するしかないよ」

DIOの目の中の私はへらへらと軽薄な笑みを浮かべている。なんだか凄く馬鹿っぽいな。

「馬鹿め」
「人の心読まないでよ」

あまりのタイミングの良さに突っ込めば、どうやらそういう訳ではなかったらしい。とても怪訝そうな顔をされてしまった。少し恥ずかしかったので、小さく咳払いをして先を促す。

「…お前は、どうしたいんだ」
「だから、行かないってば」
「それは、"行きたくない"のか"行かない方がいいから行かない"のかどっちだ?」

DIOが何を言いたいのかよく分からない。どっちにしろ行かないってい言う事には変わりないじゃないか。そりゃ行きたいか行きたくないかで訊かれたら悩む。生で承太郎見てみたいし、ジョセフさんはナイスミドルだし。でも目の保養はDIO達で事足りてるし無理して行かなくてもねぇ。

…いや、そうじゃない、そうじゃないんだよね。そんな考えは誤魔化し以外の何物でもない。(いや、承太郎を生で見たいのもマジだけど)
本心はきっと行きたいんだよ私。だって、ジョセフさんが孫と思ってるって言ってくれたの本当に嬉しかった。もう、私に家族なんていないと思ってたし。
私を家族として迎え入れてくれる人がいるなんて、思ってもみなかった。実の両親もおじいちゃんたちも喪って。葬儀に来てた女の人の言ってたように気味悪がられても仕方がないし。
もしかしたら、また温かい家庭、なんてものが手に入るんじゃないかって一瞬考えちゃったんだよ。…本当に、馬鹿だな私。手に入れたって壊すだけじゃないか。だってDIO見捨てられないし。結局壊すものを望んでどうするんだって話ですよ。

「…どうしたいんだ」

赤の中、私の顔が泣きだす寸前の様に歪むのを人ごとのみたいに眺めた。
(本当は、家族が欲しいんです)

[ 3/4 ]

[*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]