何冊もあるアルバムを見終える頃には、もう日も沈んでいた。
「あ、お夕飯どうしましょうか…」
もうあまり食料もない。買い出しに行かねばならないだろう。上着を羽織り財布を捜す。
「どこか行くのか?」
「ええ。お夕飯の材料を買いに…。明日の分も買わないといけませんし」
「ならわしも行こう。一人では大変じゃろう」
「いえ、ゆっくりなさっててください」
「そういうわけにはいかん。女の子に荷物なんて持たせてはわしの名が廃る」
ウィンクを決めながらさっさと準備を始めるのを横目に見ながら、あんなにウィンクの似合うおじいちゃんがいていいのかと本気で考えてしまう。そりゃ浮気なんてし放題だよね…。あれ?そういえば仗助ってもう生まれてるんだろうか…?
「さ、行こうか」
「あ、はい」
結局お夕飯は外食ですませてしまった。しかもジョセフさんの奢りで。資産家なのは知っているが、心苦しくてジョセフさんが止めるまで御礼を言い続ける事になった。
そして深夜。ジョセフさんが寝入ったのを見計らって、スピリッツ・アウェイを呼ぶ。
差し出された手に乗せる手が緊張で震える。ああ、まるで初めて自分の意思であそこに行った時の様だな、なんて思いながら目を閉じた。
「久しぶりだな」
「うん。久しぶり…DIO」
ベッドで寛いでいたDIOの膝の上に現れたのをいいことにそのまま抱きつけば、DIOからも軽く抱擁される。
「…無事、おじいちゃんの葬儀も終わりました」
「そうか」
「色々ありがとね」
「気にするな。…それより茉莉香」
なに?と顔を上げようとした時には、もう天井とDIOの顔しか目に映らなかった。
「D、DIO?」
「…随分と不快な臭いがするな。一体誰と一緒に居た」
その言葉にびくりと身体が揺れる。が、私の首に鼻をつけて匂いを嗅がれるの恥ずかしさのほうが勝った。
「ちょ、とりあえず匂い嗅ぐの止めて!」
「うるさい、誰と居たかさっさと言え」
こちらを見るDIOの表情は怒っているというよりは、拗ねているに近いものが有ってつい吹き出してしまった。
「…今日の食事はお前でいいな」
「すいません、ごめんなさい!許して!」
「なら早く言う事だな」
私の反応に気が抜けたのかくつくつと笑いながらまたもや首に顔を埋める。ちらちらと当たる髪の毛がくすぐったい。
「言う!言うから」
「誰の匂いだ」
顔を上げたDIOに対して真顔になれば、DIOも同じように目を細める。それを見つめながら私はそっと口を開いた。
「…ジョセフ・ジョースター」
二人の間にある空気が音を立てて固まったような錯覚に、陥った。
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