「ディ、DIOがマゾって、マゾって…!!」
腹を抱えながら小刻みに身体を震わせながら茉莉香が呟く。ツボに入り過ぎたのか言葉が切れ切れだ。
「…何がおかしい」
隣から地を這うような低い声が聞こえて、元々伸びていた背筋が更に伸びた。
「これを、おかしいと言わ、ずに、何を、おかしいと…!」
ひーひーと引き攣れた呼吸しながら、涙を溜めた目でDIO様を見詰める。
そのストレートな反応にダンもつられそうになるが必死に我慢した。今笑ったら、確実に殺される。この場でああ出来るのは茉莉香だけだ。目を逸らした先では、ラバーソールやテレンスたちも下を向いて何かに耐えている。
ああ。笑いたいのは自分だけではないんだな、とダンは少し安心した。この場で笑いをこらえてないのはヴァニラとDIO様だけだろう。
「…大体猫だと、マゾヒストというのはどう言う事だ」
DIO様は認めたくないのか言葉に一瞬躊躇いが見えた。
「あー…犬って従順だし、人が上位に立てるからそれを選ぶとサドなんじゃない?逆に猫は芸を覚えるとか全くしないで自由奔放だし。飼い主はそれに振り回されるからねぇ。そういう意味ではマゾなんじゃない?」
ようやく笑い止んだ茉莉香が分かりやすい説明をした。…確かに猫を飼うと奴隷の様に気を使うとダニエルが言っていたな。
「振り回されるのは事実だが、芸は覚えるよ?」
いつの間にか飼い猫を抱いたダニエルが横やりを入れる。…今はそういう話だったか?…一体今日だけで何度頭を抱えたくなったのかとダンは泣きたい気分になった。
だが、この状況はまだまだ続きそうだ。
藪を突いたら大蛇が出たおまけ。
「…あんたら何してんだ?」
いつまで続くのかと思っていた空気は、ホル・ホースの出現によって思いのほか早く消えた。たまには役に立つ…とダンが思ったその時。
「お、その本ここに忘れてったのか」
「…なん、だと。お前の本なのか?」
「おお、そうだけどよ…。つーかダン、お前どうした?すげえ怖い顔になってんぞ?」
「…」
無言でラバーズをホル・ホースの脳内に送り込み、脛を思い切り机にぶつけてやった。
のたうち回る奴を見て、優越感がわく私はやはりマゾではないな、と小さく笑った。
(ホル・ホースは訳も分からずDIO様に図書館の清掃を命じられて半泣きになっていたが、いい気味だと皆で笑っておいた)
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