神隠しの少女 | ナノ






もう、残っているのはダンと茉莉香だけだ。

「んー…どっちも好きだけど飼うなら犬、かな」
「私は猫だな」
「お、丁度半分半分だな」

そんなことを言いつつ、鼻歌を歌いながらラバーソールがページを捲る。さて、いったいどんな意味の質問だったのか。そんなことを考えている自分も案外満喫しているな、とダンは思わず苦笑する。
…それにしてもラバーソールの反応がない。不審に思って伺えば、それはもう目が泳ぎ回っていた。

「…お前何してんだ。さっさと答えを言え」
「いや、でも…これいいのかなー…」

歯切れの悪いラバーソールから茉莉香が本を奪い取り口を開く。

「えーっと、『犬を選んだ貴方はサディスト、猫を選んだ貴方はマゾヒストです』…だって…」

その答えにその場にいた者全てが固まる。子供に読ませていい内容じゃなかったな、なんて現実逃避にも似た感想がダンの頭に浮かんで消えた。そして急速に思考が冷める。

…執事とンドゥール、ラバーソールがサディストと言うのはわかる。…茉莉香も悪戯で人の度肝を抜くのが好きだし、分からなくもない。
ヴァニラはDIO様に対する犠牲的ともいえる献身さからマゾヒストでも納得がいく。ダニエルは自分の魂を賭けることに快感を覚えている節もある。

自分自身は…あまり認めたくはないが、スタンドを生かすために自分を傷つけることを厭わない、という点ではまだなんとか分かる。(自分としては相手にそれ以上の苦痛を味あわせるのだから納得がいかないと言えばいかない)

ダンの頭の中で理解と半分無理やりの納得が繰り返される。…しかし、隣で無言を貫く館の主人のことについて考えるのを躊躇してしまう。


…DIO様がマゾって。マゾって。どういう反応をすればいいか分からない中、誰かが噴き出す。…いや、ダンには分かっていた。この状況で笑えるのはたった一人だけだ。

[ 3/4 ]

[*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]