神隠しの少女 | ナノ






薄暗い広間に数人の人影があった。ある者達は賭けに興じ、ある者は本を読み。眠っているかのように目を閉じている者もいる。人それぞれ思い思いに過ごしていると、広間の扉が開かれた。
広間に居た全員が扉に目を向ければ見慣れた同僚と少女の姿。その二人の顔に浮かぶ笑みにため息をつきながらそれぞれが本を閉じ、トランプを片づけ始める。

「…今度は一体何なんだ」

呆れたような声音で問いかけたのはダンだった。その目には『自分を巻き込むな』という思いがありありと見えたが、それを気にするような二人ではない。

「「ジャーン!」」

二人声を揃えて何かを掲げる。距離と薄暗さで何と書いてあるかは分からないが、どうやらポップな色合いの本らしい。ダンはこの館にもあんな装丁の本が有った事の方が気にかかった。
…一体何なんだあれは。当然の疑問が首を擡げる。

「…何だそれ」
「「心理テストの本!」」

またもや声を揃えて告げられた馬鹿馬鹿しい内容に、ダンも呆然とする。周りの者たちも同じような反応だ。一体誰だ、そんな本をここに持ち込んだ馬鹿は。
こちらの反応も気にせずに向かってきた二人がどっかりとソファに腰を据える。その瞳は好奇心で輝いていた。

「さ、皆でやってみよう!」

意気揚々と告げる少女、茉莉香にダンは再度ため息をつく。きっと誰も止められはしないのだと、諦めの境地に達したのだった。


執事が気を利かせて紅茶を用意し。いよいよ始まるのか、と思っていると思いもよらぬ乱入者達がやってきた。

「お前たち、何をしているのだ」

いつの間にか入ってきた館の主人に茉莉香を除いた全員が席を立つ。茉莉香だけは呑気に手を振っていた。

「これから心理テストやるんだー。DIOとヴァニラもやる?」

恐れるでもなく言いのける茉莉香に頷くと、DIO様もソファへと腰を下ろした。普段よりも近いその距離に自然とダンの背筋が伸びる。
ああ、何故こんな状況に陥ってしまったのか。頭を抱えたいのを我慢しながらダンは己の不幸を嘆いた。

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