神隠しの少女 | ナノ






とにかく、地べたに座ってないでお茶でも飲みませんか。という執事さんの言葉に皆のろのろと立ち上がる。

「ああ、ソファに泥が付くと困りますから、食堂に行ってくださいね」
「はーい」

間延びした返事をして歩き出すと後ろから話し声が聞こえた。

「何かお手伝いすることありますか」
「そうですね、タルトを運んで頂けますか」
「分かりました」

ちらり、と見ると執事さんと仲良く微笑みあっている。…あの少女は一体何者なんだろうか。餌の女の子供とか?いや、だとしてもDIO様が相手するなんてことはないだろう。
まさか、隠し子か!…いやいや、確かまだ100年の眠りとやらから覚めて1・2年だろ?あんなデカイ子供が居るはずもない。
後ろを歩くDIO様に一言聞けば全て分かるのだろうけれど、んなことは聞き辛くて振り向くことすら諦めた。


食堂について数分。沈黙が続く中に執事さん達が入ってきた。
テキパキと紅茶とタルトを配ると、彼女は当たり前の様にDIO様の隣に座った。…だから、どういう関係なんだよ。

「ほう、桃のタルトか」
「うん。テレンスさんと作ったんだー」
「…食えるのか」
「…吸血鬼って髪の毛ひっこ抜いても直ぐ生えるかどうか気にならない?」
「ふむ、美味そうだな」

ニコリと笑いながらDIO様の頭部に手を伸ばしながら、脅迫とも言える言葉を呟く。それ自体も驚きだが、DIO様がそれに対してなんの粛清も与えないことに更に度肝を抜かれた。
ああ、本当にどういう関係なわけ!?聞きたくて仕方ない感情と、逆鱗に触れたらという恐怖が綯い交ぜになって口が動かない。

「DIO様」
「なんだ、ダニエル」
「失礼ですが…そのお嬢さんは新しい部下ですか?」

おじさんナイス!その言葉にどんな言葉が返ってくるのか。つい背筋をただしていると、先に答えたのは彼女の方だった。

「…皆さんには失礼ですが、DIOの部下には頭を下げられてもなりたくないですね」

それはもう嫌そうに眉を顰めながら吐き捨てた。俺たちは固まり、執事さんは噴き出したのを懸命に誤魔化そうと咳き込んでいる。
肝心のDIO様は普段と変わらず涼しい顔をしながら考え込んで。

「まあ、客人…いや、友人、と言っておこう」

と、これまた驚愕の言葉を口にしたものだから、俺達がカップを取り落としたのは仕方がないことだと思う。執事さんにめっちゃ怒られたけど。

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