神隠しの少女 | ナノ






任されていた仕事を終えて、報告がてら執事さんに何か食事でも作ってもらおう。そんな風に考えながら館を訪れれば、珍しく明かりが灯っていた。何かあったのかと思いながら進めば、広間の扉の前に同僚が三人顔を突き合わせてた。…何してんのこの人達。
とりあえず一番手前に居た先輩に声を掛けてみる。

「ねえ、何してんの?」

先輩ことスティーリー・ダンはハッとこちらを振り向き、いきなり口を塞いできた。何だかよく分からないし、舌を出して一舐めしたら凄い嫌そうな顔をされる。…酷くない?

「ねー、何してんのってば」

俺の服で手を拭く先輩にもう一度尋ねれば、ホル・ホースの旦那が答えてくれた。

「DIO…様が中に居んだよ」

その言葉に首を傾げる。それは質問の答えとして妥当か?そりゃ滅多に広間には来ないし、側に居るのは緊張するけどここで折り重なってなくてもいいじゃないか。
そんな考えが顔に出ていたのか、旦那は扉を指差す。…覗いてみろってことか。まあ、それが一番早いかもね。
なんとなく音を立てないように扉を薄く開く。ここも廊下と同じく明るいことに驚きながらも目を凝らせば、ソファに座って本を読んでいる館の主が居た。別段変った所はない気がする。
見てるの多分気付かれてんだろうなー、なんてうすら寒い気持ちになりながら観察を続けると不思議な物が目に入った。…DIO様の膝の上になんか、ある?
更に目を凝らすと、それが頭部だということが分かる。一瞬生首かと思ったが、机で体が見えないだけだと気付いて、息を吐いた。

何も声を掛けられないのをいいことにまじまじと観察する。大きさからして子供だろうか。髪は短くて男か女か分からない。何も身動ぎしないのは寝ているのか死んでいるのか。どちらにしろあの人が膝枕しているという訳の分からない現実には変わりないんだけれど。

「何を見ている、ラバーソウル」

急に名前を呼ばれたもんだから、腕が跳ねて扉を押す。つまり大きく開いた訳で。後ろに居た皆と共に雪崩れ込むように倒れてしまった。
色んな悲鳴が上がる。一番下だったから思い切り顔を打ってしまった。このハンサム顔が傷ついたらどうする!
どうにか山から抜け出したのと、DIO様の膝の上の子供が身動ぎしたのは同時だった。

「何の、音」

むくりと起きあがったのは、まだ年端もいかぬ少女だった。ぼんやりとした目でこちらを見て、ピシリと固まった。

「…誰?」

…そりゃこっちの台詞だお嬢ちゃん。

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