神隠しの少女 | ナノ






漸く泣きやんだ時、ディアボロの服はぐっしょりと濡れていた。

「…ごめん」
「これくらい気にするな」

ぽんぽん、と宥めるように触れる手は相も変わらず優しいもので。何だか妙にこそばゆく感じた。

「心配、かけたよね」
「ああ。後でお祖父さんと神父様にも謝って来い」
「うん」

小さく頷いた際に、背中まで伸びた髪が顔にかかる。

「…」
「マリカ?」

無言で辺りを見回す私にディアボロが声を掛けるが、気にせずに見つけた目当ての物に駆け寄る。

「なっ!」

驚きの声が上がるが、構わずに拾い上げると髪を引っ掴み…切り捨てた。唖然とするディアボロをよそに、ザクザクと鋏を動かす。ほんの数秒の内に、全てが終わった。
床に散らばる髪の毛を見下ろしながら、自然と笑みが浮かぶ。

これは、決別だ。ただ目を覆い、隠れ続けた弱い自分との。

私は、私がしてもらって来たように、命を懸けて大切な物を守ろう。全てを守るなんて大それたことは言わない。時に、辛い選択を強いられるかもしれない。誰かを見捨てることになるのかもしれない。責められることもあるのかもしれない。

それでも、どんな手段を使っても、責められても、苦しんでも。ただ、大切なものを守るために、私は生きる。
それが、私の覚悟だ。

もう、迷わない。



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