神隠しの少女 | ナノ






「…いいよ、答える」
「…あの日、お前は何をしたんだ」

直球な質問に肩が揺れる。

「答えてくれ」

ディアボロの方を伺えば、私をじっと見つめていて。私は口を、開いた。

「私には、不思議な力があるの」
「不思議な力?」

こんなことを言われても、訳が分からないのは当たり前だろう。でも、その疑問に上手く答えられる自身が無くてとにかく捲し立てた。

「それは、人でも物でも隠せて、やろうと思えばどんなふうにでも出来るの」

側に転がっていたぬいぐるみを持ち上げて、隠して見せる。そしてディアボロの膝の上に切り裂かれたぬいぐるみが落ちた。
…上手く制御できるか不安だったが、どうやら上手く出来たらしい。
ディアボロはぬいぐるみを手にとってしげしげと眺めていた。

「…あの男の事を知らなければ、手品かと思っただろうな」
「だろう、ね」

私だってスタンドの事を知らなかったらそう思ったと思う。

「まあ、お前に不思議な力とやらがあるのは分かった。…もう一つは、なんで閉じこもってるんだ」
「…上手く、制御できない」
「制御?」
「うん。…この部屋もね、いつの間にか物が消えて、どこからか出てきてこうなったんだよね」

自分の力なのに全然上手く使えないんだ、と小さく笑ってみる。

「もしかしたら、おじいちゃんやお兄ちゃんもそのぬいぐるみみたいにしちゃうかもしれないから」

だから、外には出ない。きっぱりと言い切って目を閉じた。

「このぬいぐるみの様に、か」
「うん、だからお兄ちゃんも外に…」

出てくれ、と言おうとするがそれは叶わなかった。
乾いた破裂音を伴って頬に衝撃が走る。

「え、は?」

頬に手を当てて目を白黒させる私をディアボロが仁王立ちになって見下ろしてくる。

「お前が俺を傷つけられるはずないだろう」
「…分からないじゃん」

そう、何が消されるかなんて分からない。大切なものだって、壊してしまうかもしれないのに。
唇をかみしめる私にまたため息をつく。

「お前はアホみたいに優しい奴だ」
「…アホって」
「本当の事だろう」
「…」
「お前今の状況を、当ててやる」
「?」
「どうせ、あの男を殺した罪悪感に苛まれてたり、自分が居なければお祖母さんは死ななかったのにとか考えてるんだろう」

…見事に当てられて何も反論が出来ない。

「本当に大馬鹿だな」
「今度は馬鹿ときたか…」
「あの時お前が殺していなかったら、俺があの男を殺していた」
「…」
「俺はそうしたとしても、何も悪いとは思わなかったろうな」
「…なんで?」
「あの屑とお前を比べれば、あいつには何の価値もない。むしろマイナス以外の何物でもないからだ」
「価値…」
「ああ、価値だ。自分にとって大切な物を守ったことに対して罪悪感など存在しない」
「…」
「お前は、もし俺がお前の状況に居たらどうした」
「…私もきっと、殺したよ」

そう、あの男とディアボロとでは比べるまでもない。

「それを、罪だと思うか」

どう、だろうか。ディアボロの様に、全く罪悪感を感じない訳ではないだろうが、きっとここまで考え込んだりはしなかっただろう。その状況が何度繰り返されたって、きっと私はディアボロを選んで誰かを殺すのだ。

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